ルクセンブルクの法人税率やルクセンブルクリークスについて解説!
タックスヘイブンのルクセンブルクはどんな国?
正しくはルクセンブルク大公国というヨーロッパの国をご存知ですか?
ベルギー・フランス・ドイツに囲まれた、人口39万人ほどの小さな国です。
そんなルクセンブルクの特徴といえば、先進国でありながらも、タックスヘイブンとして利用される税制です。
今回はタックスヘイブンという観点から見るルクセンブルクについて、詳しくご紹介していきましょう。
ルクセンブルクの法人税率は?
ルクセンブルクの法人税率について
ルクセンブルクの法人税は、現在21%となっています。
日本は30%ですので、日本に比べれば低いものの、他のタックスヘイブン国と比べればやや高めの数値です。
しかし今後2年間で、21%から18%に引き下げられることが決定しました。
これにより、年度ごとに課税される税率が変更されることになります。
例えば純課税ベースが30,000ユーロを超える法人所得税率は、2017課税年度は19%ですが、2018年度には18%になります。
また課税ベースが25,000ユーロから30,001ユーロの法人所得税は、2017年度は3,750ユーロと25,000ユーロ超の課税ベースの39%の合計額になりますし、2018年度は3,750ユーロと25,000ユーロ超の課税ベースの33%の合計額となります。
ちなみに2017年度からは、課税ベースが25,000ユーロ未満の法人には15%の軽減税率が適用されるようになりますので、所得の低い企業にとっては嬉しい改正となるでしょう。
ルクセンブルクの人々の特徴とは?
ルクセンブルクには特筆するような自国産業はありません。
そのため海外から学ぼうとする姿勢がとても強い国民性だという特徴があります。
これを証明するかのように、留学生制度がとても充実しており、学生の頃から国外で勉強することを国が推奨しているのです。
そう考えると、ルクセンブルク人は広い視野を持ったオープンマインドな人々だということになるでしょう。
どんな企業がルクセンブルクに拠点を置いているのか?
ルクセンブルクに本拠点を置く企業の中で、誰しもが知る大企業といえば、やはりAmazonでしょう。
本社とまではいきませんが、ヨーロッパを統括する本部オフィスを設置し、現在では400人以上がここで勤務しています。
他にも携帯事業で大きなシェアを誇るVodafone、お財布携帯などの発展で事業拡大しているPayPalなども、2年前からルクセンブルクにヨーロッパ統括オフィスを置いています。
ちなみにゲーム業界からは、韓国の大手企業ネクソンもヨーロッパ専用統括オフィスを、ここルクセンブルクに置いています。
ルクセンブルクのアドバンテージとは?
タックスヘイブンとして利用されているルクセンブルクですが、他のタックスヘイブン先と異なる点があります。
それが法人税を目的とされていないということです。
ルクセンブルクに法人を設立するメリットは、法人税ではなく所得税率の低さなのです。
またそれと共に金融政策で見事に国を盛り返した証として、ルクセンブルクには100以上の銀行が存在しています。
タックスヘイブンとしてのルクセンブルクの魅力は、低い法人税率と優秀な金融政策がアドバンテージとなっているのです。
ルクセンブルクの金融頼みも限界にきている
ルクセンブルクのアドバンテージとしてあり続けた金融業ですが、今それに陰りが出てきています。
100以上の銀行を所有し、金融セクターのGDPが国の1/4を占める金融大国でもあるルクセンブルクですが、昨今のタックスヘイブンに対する規制強化により問題視される傾向が強まってきたのです。
OECDが各国に求めるタックスヘイブン規制には、透明性の向上や情報共有などが含まれています。
しかしルクセンブルクではその規制にあまり協力的ではないと非難されているのです。
海外から学ぶ姿勢の強いルクセンブルクだけに、今までは柔軟な対応で世界に適用してきましたが、これからもその姿勢が貫けるかどうかが、ルクセンブルク金融界に求められています。
ルクセンブルク・リークスとは?
ルクセンブルク・リークスとは、租税回避を可能とするための複雑な財政構造の詳細が記されたものです。
それは28,000ページにものぼる、膨大な量の内部資料でした。
またこれにはルクセンブルクの税務当局が、多国籍企業数100社に対し、巨額の優遇課税を協定し行っていたことを示す証拠ともいえるものす。
ニュースなどで世界中に物議を醸したパナマ文書をイメージしてもらえると、ルクセンブルク・リークスがどういうものなのかわかりやすいかもしれません。
パナマ文書同様、このルクセンブルク・リークスも、タックスヘイブンへの注目を集めるきっかけとも言えます。
この内部資料の発覚もあって、よりルクセンブルクへの世界からの懸念が強まったのです。
ルクセンブルクの税制改正について
タックスヘイブン規制の強化を求める世界からの声に応えるように、ルクセンブルクでは税制改正が行われています。
先ほど法人税率をご紹介する際に、2年で3%の法人税低下が行われるのも、この法改正の影響です。
ここで注目すべきなのは富裕税(NWT)です。
この富裕税が、ルクセンブルグに拠点を置く全ての企業に拡大し適用されていくことになるのです。
「所得税率が低いから」と本拠点を置くAmazonなどの企業にとっては、決して嬉しい改正ではありません。
富裕税増税の対象としては、「総固定金融資産、譲渡可能証券、現金が総資産の90%ある企業」が含まれています。
例えば35万ユーロを超える持株・金融会社に適用されるミニマムNWTの場合は、それまで3,210ユーロだったものが、4,815ユーロにまで増額されることになります。
日本とルクセンブルクの租税条約について
日本とルクセンブルクには、2か国の間でだけ適用される「日本・ルクセンブルクの租税条約」というものがあります。
これは2010年1月25日に改正された比較的新しい租税条約で、その内容としましては「所定のルクセンブルク持株会社には適用されない」というものです。
つまり日本のタックスヘイブン税制対策の対象であっても、ルクセンブルクが株を所有している企業ならば対象外にしますよ、というものです。
タックスヘイブンについて知りたいなら
今回はルクセンブルクに焦点を充てご紹介していますが、そもそもタックスヘイブンとはどういった仕組みで行われているものなのかはおわかりでしょうか。
またタックスヘイブンがなぜ企業や富裕層に選ばれるのか、そしてタックスヘイブンはなぜ問題視されるのか、これらタックスヘイブンに関する基礎知識を詳しく紹介してくれているのが下記の記事です。
こちらも併せて参考にしてみましょう。
「よく聞くタックスヘイブンって何?分かりやすく解説します!」
タックスヘイブンの規制について知りたいなら
タックスヘイブンは合法の節税方法ですが、それは規制を守った上で行うことが大前提となっています。
タックスヘイブンの利用を考えているのであれば、この規制は必ず把握しておかねばなりません。
日本のタックスヘイブン税制対策については、下記の記事で詳しく解説されています。
タックスヘイブンに関する知識の中でも特に大事なものとなりますので、こちらも一読してみると良いでしょう。
「タックスヘイブンによる日本の税制について分かりやすく解説!」
タックスヘイブンによる節税は難しくなっている
タックスヘイブンとして利用されているルクセンブルクですが、国の中で様々な問題が起こっていることがおわかり頂けたかと思います。
また法改正も進むなど、今後更にタックスヘイブンを行うのは困難になっていくでしょう。
大きな節税効果をもたらしてくれるタックスヘイブンですが、それには高いリスクがついてまわることを覚えておきましょう。
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