大企業や富裕層が活用するタックスヘイブンとは?
タックスヘイブンを分かりやすく解説すると
タックスヘイブンとは、直訳すると「税の避難所」という意味になります。
自国よりも税率の低い国の税制を利用することで、納税額を節税する方法です。
しかし自国の税率から逃れるこの行為は「税逃れ」として非難されることもあり、問題視されることの多い方法でもあります。
今回はこのタックスヘイブンについて、詳しくご紹介していきましょう。
タックスヘイブンとはそもそもどういう仕組みなのかはもちろん、タックスヘイブンに関する大事な規制、富裕層や企業がタックスヘイブンを活用するその理由など、タックスヘイブンにまつわるあらゆる事柄について、分かりやすく解説していきたいと思います。
タックスヘイブンの国は?仕組みと特徴
タックスヘイブンの仕組みとは?
タックスヘイブンの仕組み、それは「自国よりも低い税率の国を利用すること」です。
例えば自国の法人税が30%の国に住んでいたとしましょう。
しかしお隣の国では法人税が10%だったとしたらどうしますか?
それならばお隣の国で法人を設立した方が、法人税20%分安くすることができますね。
このように、自国よりも税率の低い国に法人を設立する、もしくは子会社を置くことで、その国の低い税率を適用させる仕組みが、タックスヘイブンなのです。
タックスヘイブンの地域の特徴とは?
タックスヘイブン=税率の低い国や地域は、世界中に存在します。
範囲としては、下記のような場所が挙げられるでしょう。
これらタックスヘイブン地域には、4つの共通点が存在します。
まず1つ目が「税率が低いこと」です。
これがあってこそのタックスヘイブンです。
2つ目が「規制が緩いこと」です。
例えば日本国内で脱税を行うことは非常に難しく、必ず税務署によって暴かれることになります。
しかしこれらのタックスヘイブン地域では、そのような税制に対する規制が緩く、過干渉ではないという共通点があります。
3つ目は「秘匿性が高い」ということです。
これはその国の法律によっても異なりますが、「社長の名前は公開しなくて良い」とされている場合もありますし、「口座情報は当事者以外詮索することを禁止」としている国もあります。
要するに、タックスヘイブンを利用していたとしても、その情報が洩れる可能性がとても低いのです。
最後の4つ目、これがタックスヘイブンの是非を問う大事なポイントになります。
それが「実質的活動が行われることを必ずしも要求しない」というものです。
つまり「国にさえ住所があるなら実際に実績がなくてもいいよ」とすることですね。
これにより、会社としての建物が必要なかったり、実際にその国に行かずとも日本にいながら法人を設立することもできてしまいます。
タックスヘイブンの形態について
一言にタックスヘイブンと言っても、その形態は大きく4つに分類することができます。
1つ目が、税金が一切かからない「無税国」です。
これは法人税だけでなく、所得税や相続税などもかかることはありません。
2つ目は「低税率国」です。
0%とまではいかずとも、10%代の低い税制を取っている国や地域を指します。
アジアですと香港の16.5%、シンガポールの17%がこの低税率国に当たります。
3つ目は少し難しい「国外源泉所得非課税国」と呼ばれるものです。
本来であれば「全世界所得課税」といって、海外で所得が生じたとしても、元々登記をしている自国で課税されることになる国があります。
ちなみに日本もこの全世界所得課税国です。
しかし「国外源泉所得非課税国」であれば、国外で所得が生じたとしても課税されることはありません。
4つ目は「租税特典国」です。
金額や事業内容などの条件はつきますが、該当する項目であれば減税される税制がある国を言います。
タックスヘイブンは違法なのか?
「自国の税率から逃れる」「税逃れ」、こんな風に聞くと違法のように感じるかもしれません。
しかしタックスヘイブンは違法ではありません。
自国とタックスヘイブン先の規制をしっかり守った上で行うのであれば、タックスヘイブンは合法の節税方法なのです。
タックスヘイブンをするメリットとは?
タックスヘイブンを行うメリットとしては、納税額が安くなることが何よりのメリットとなるでしょう。
企業側からしてみれば、税金はただのコストでしかありません。
それを安くできるのですから、その分経営に回すことができます。
タックスヘイブンでよく活用されるペーパーカンパニーとは?
先ほどタックスヘイブンの4つの共通点でも述べましたが、「実質的活動が行われることを必ずしも要求しない」ということは、ペーパーカンパニーでも良いということです。
このペーパーカンパニーとは、登記はあるものの、実際に建物や営業実績はない会社のことを言います。
その名の通りですが、「紙の上でのみ存在する会社」と言うとわかりやすいかもしれません。
タックスヘイブンは何が問題なのか?
合法で納税額を安くできる企業側からすれば、何も問題ないかもしれません。
しかし自国側からしてみれば、本来納税されるべきお金が入ってこないことになりますので国益を失うことになります。
国益を失うことはそのまま国の財政問題に直結しますので、歓迎されることでないのは容易に想像できるでしょう。
タックスヘイブンは違法ではないこと、これが1番の問題なのです。
違法ではないからやめろとは言えないものの、放置しておくと税率の低くない国や地域からはお金が流出し続けてしまうのです。
タックスヘイブンはなぜ無くならない
ではなぜタックスヘイブンを禁止にしてしまわないのでしょうか。
その答えは「タックスヘイブン先の存続に関わるため」という大きな問題があります。
タックスヘイブン先となっている国や地域の多くは、自国産業のない弱小国です。
弱小国だからこそ、敢えて税率を下げ、海外からの資金の確保、それに伴う雇用を生み出そうとしているのです。
そんな国や地域からタックスヘイブンを奪ってしまえば、その国は破綻してしまいかねません。
そのため、今後もタックスヘイブンに対する規制が強くなることはあっても、タックスヘイブンそのものがなくなることはないと言えるでしょう。
タックスヘイブンと日本の関係とは?
日本でもタックスヘイブンを問題視する声は多く上がっています。
なぜなら、タックスヘイブンを利用し税金逃れをしている世界中の国の中で、日本はアメリカに次いで2位なのです。
日本は世界で2番目に「タックスヘイブンで国益を失っている国」ということになります。
これがよくわかるのが、2012年の税収データです。
日本国内で徴収された税金額は50兆円となっています。
しかし同じ年にタックスヘイブンで海外に流出した金額は55兆円にも上るのです。
最近では消費税10%を巡って増税問題が取り沙汰されていますが、タックスヘイブンで国益を全て得ているのであれば、消費税は増税されるどころか減税されるかもしれない、それほど大きな金額を失っているのです。
富裕層や企業がタックスヘイブンを活用する理由
タックスヘイブンを活用する理由とは?
タックスヘイブンを利用府するメリットは、納税額を安くできることでした。
しかしそれ以外でも、企業側がタックスヘイブンを活用する理由が5つあります。
ここではそんな理由をひとつひとつ、ご説明していきましょう。
理由その1:事業のスピード化を図るため
事業を行う上で、タイミングが重要な意味を持つ時があります。
チャンスを掴むためにスピードが要求されることもあるでしょう。
そんな時でも、タックスヘイブンは非常に大きな役割を果たします。
タックスヘイブン先の多くでは、経営していく上で、日本のような複雑な手続きや面倒な時間がかかることはありません。
企業・弁護士・銀行などを含め、ワンストップで事業を動かすことが可能なのです。
素早い対応ができるため、タックスヘイブン先に企業を置くことは、ビジネスチャンスを掴みやすくなるというメリットもあります。
理由その2:二重課税を回避するため
タックスヘイブンの形態の3つ目に、「国外源泉所得非課税国」を紹介したのを覚えていますでしょうか。
しかし日本はタックスヘイブンではないため、「全世界所得課税国」という形態を取っています。
-
・国外源泉所得非課税国:海外での所得は非課税
-
・全世界所得課税国:海外所得は自国で課税
このような違いがありました。
ここで注意せねばならないのが、タックスヘイブン先でも日本と同じ全世界所得課税国があるということです。
そうなると、利益を上げた国でも自国でも課税対象になってしまうという二重課税になる恐れがあります。
しかしタックスヘイブン先をしっかりと選べば、このような二重課税になるリスクは防げます。
この理由は全てのタックスヘイブン先で言えることではありませんが、少なくとも国外源泉所得非課税国を選べば、海外で利益を上げる=所得ができることで起こり得る二重課税になるリスクはないのです。
理由その3:ファンドの利益の分配を最大化するため
税率は何も所得だけに課せられるものではありません。
日本の税制のように、ファンドの分配金や配当金も課税対象となるのが普通です。
しかしタックスヘイブン先によっては、これらのファンドの利益にも一切税金がかからないことがあります。
会社の所得による納税額を減らすことができるタックスヘイブンでは、このファンドの利益をも税金によって減額されることなく手に入れることが可能なのです。
これは特に株式会社にとっては大きな理由となるでしょう。
理由その4:匿名性を活用するため
匿名性の高さを1番の理由にタックスヘイブンを行うというのは少ないかもしれませんが、メリットのひとつとして考える場合はあるかもしれません。
先述したように、タックスヘイブンでは詳細な情報が公開されることはありません。
取締役や株主の名前が公開されないことはもちろん、第三者名義での設立も可能であったりと、世間に投資活動を知られたくない人にとっては、タックスヘイブンの秘匿性の高さは嬉しいメリットとなります。
理由その5:租税回避を目的とした活用
5つ目にご紹介する理由は、決してこれを目的で行ってはいけないものです。
それは租税回避目的です。
みなさんご存知のように、租税回避は脱税と同じく犯罪とされています。
しかしタックスヘイブンの多くは規制が緩く、また秘匿性も高いため、お金の流れが把握しにくいという特徴があります。
それゆえ犯罪者の温床にもなりうるのです。
確かにタックスヘイブンで租税回避を行うことは可能ですが、これを目的として利用することは決して行ってはいけません。
法人税の税率が低くて会社を簡単に設立する事ができる
上記でご紹介した5つの理由のように、タックスヘイブンは様々な目的のために利用することが可能です。
しかも規制の緩さや秘匿性の高さ、また実績を必要としないという特徴ゆえに、簡単に法人を設立することができるのです。
タックスヘイブンは違法ではありませんが、それは双方の国の規制を守った時のみです。
当然ながらひとつでも法を犯していれば、それは犯罪行為になります。
大きな節税効果をもたらすタックスヘイブンですが、しっかりと規制を把握した上で行う必要があることを忘れてはいけません。
タックスヘイブンは個人にもメリットはある?
個人でもタックスヘイブン活用できるのか?
ここまで企業や富裕層が利用するという前提で、タックスヘイブンについてご紹介してきました。
ここでひとつ疑問に思うのが「個人でも利用できるのかどうか」ということでしょう。
結論から述べますと、個人でもタックスヘイブンを利用することは可能です。
しかし企業などが利用する場合とは異なり、更に厳しいハードルがあります。
正確に言いますと「個人でも利用できるけれど難しい」になるでしょう。
個人がタックスヘイブンを利用する際のハードルは?
個人でタックスヘイブンを行う際に1番のハードルとなるのが居住権です。
みなさんは当然ながら日本国内のどこかに住民票を置いているかと思います。
この「居住権が日本にある」というのは、それだけで「日本の税制が適用される」ことになるのです。
つまり個人でタックスヘイブンを利用したいのであれば、タックスヘイブン先に居住権を置く必要があります。
これは何も移住までしなくても、「1年の半分以上をその国で過ごす」などの条件で移すことも可能ですが、家族や仕事の都合を考えれば、いち個人が海外に居住権を移すことは非常にハードルの高いものとなるでしょう。
その他の税金問題について
個人でタックスヘイブンを活用して意味があるのは、「海外先に居住権を移しその国の税制を利用できる時」ですが、それには「海外で多くの利益を上げられるため」という理由がついてこなければ意味がありません。
なぜなら日本国内での利益は全て日本の税制が適用されてしまうからです。
つまり海外(タックスヘイブン先)に居住権があり、なおかつその国で利益があるためその国の税制を適用することで得がある場合でなければ、個人でタックスヘイブンを行う意味はないのです。
また居住権が移っていないのであれば、相続税の軽減、所得税の有無などの恩恵もありません。
個人ではタックスヘイブンを行ったとしても、その恩恵を受けられる人はごくわずかになるでしょう。
そういう意味でも、「個人でも利用できるけれど難しい」ということになります。
パナマ文書について知りたい場合は?
パナマ文書という言葉を聞いたことがあるでしょうか。
多くの方は「パナマ文書流出事件」で耳にされたのではないかと思います。
このパナマ文書は、タックスヘイブンに注目を集めることになった大きなきっかけとして、世界中で話題になりました。
パナマ文書は、タックスヘイブンを利用した顧客の情報が事細かに記録されていたものです。
冒頭で「自国とタックスヘイブン先の規制をしっかり守った上で行うのであれば、タックスヘイブンは合法の節税方法」と述べましたが、このパナマ文書には、法を破った人々や企業の名前も記載されていたのです。
そのため「犯罪者の名前がある」とされ、あれだけ話題になりました。
パナマ文書はどのような経緯で流出することになったのか、またそこに記載されていた人や企業の名前を知りたい方は、パナマ文書について詳しく紹介されている下記の記事を一読してみましょう。
「タックスヘイブンのパナマ文書って何?分かりやすく解説します!」
タックスヘイブンの国や地域について知りたい場合は?
上記の「タックスヘイブンの地域の特徴とは?」でも少し触れましたが、タックスヘイブンとして知られる国や地域は、世界中に存在します。
その中には特に悪質であるとされ、ブラックリストに載っている場所もあるのです。
タックスヘイブン先の国や地域はどのような場所なのか、またブラックリストに載っている場所はどこなのか、それらを知りたい方は下記の記事を参考にしてみましょう。
タックスヘイブン対策税制について知りたいなら
問題視され国益を失うことになるタックスヘイブンは、そのまま放っておくことはできません。
そこで日本にも、このタックスヘイブンに対する税制規制が存在します。
この制度により規制該当となるものの中にペーパーカンパニーがあります。
ペーパーカンパニーは、「実質的活動が行われることを必ずしも要求しない」というタックスヘイブンの共通点4つ目に該当するものですが、これがその時「タックスヘイブンの是非を問う大事なポイント」と述べた理由です。
ペーパーカンパニーであれば規制される制度ですが、もちろんそれ以外にも規制対象は存在します。
国益を守るために日本が定めたタックスヘイブン対策税制とはどのような制度なのか、これは下記の記事で詳しく説明されています。
タックスヘイブンを知る上で欠かせない大事な問題ですので、ぜひ併せて学んでおきましょう。
いいことばかりではない…タックスヘイブンの闇
タックスヘイブンの大きな闇とは?
タックスヘイブンが問題視される理由は、国益を失う行為というだけではありません。
もうひとつが「犯罪の温床になりやすい」という点です。
「タックスヘイブンを利用する目的」でも述べましたが、租税行為に使われてしまうことや、犯罪により得たお金が置かれるなど、決して行ってはいけない目的で利用されてしまうことも数多くあります。
それはパナマ文書流出事件でもおわかりいただけるでしょう。
この文書にも犯罪目的での利用者の名前があったように、タックスヘイブンには大きな闇が隠されているため、問題視される声がなくなることはないのです。
タックスヘイブンは 多国籍企業から犯罪グループまで活用する
多国籍企業とは、世界中に子会社や支店を置く企業を指しますが、そのような企業でタックスヘイブンを活用している場合、本社をタックスヘイブン先とする場合が多く見れらます。
こうすることで、法人税を大きく節税できるためです。
これは犯罪ではないため違法にはなりません。
しかし問題なのは、犯罪組織も利用しているということです。
タックスヘイブンはその秘匿性の高さゆえに、口座情報が開示されることはありません。
そのため麻薬の取引、脱税・汚職などの隠し財産など、犯罪グループの温床として利用されることもあるのです。
「タックスヘイブンそのものは違法でなくても、違法目的で利用されることの多い方法でもある」、これがタックスヘイブンの大きな闇になります。
米国は10兆円もの税収を失っている
日本が世界で2番目にタックスヘイブン利用国であることは先ほど述べましたが、1位のアメリカは世界一の利用率を誇り、その額は年間1,000億ドル(日本円でおよそ10兆円)という大きな金額になります。
また世界の銀行の半分、世界の企業のおよそ1/3がタックスヘイブンを利用しているとされており、その額は1,800兆円にも上ります。
この1,800兆円という数字は、世界総生産額の1/3に充たる数字です。
これだけの金額が自国ではなく他国に流れているのですから、タックスヘイブンが世界中の悩みの種となっている現状がおわかりいただけるでしょう。
タックスヘイブンは大英帝国が作り上げた租税回避地である
では何故タックスヘイブンを禁止にしたり、もっと強い圧力をかけてなくならせることができないのでしょうか。
この理由として「弱小国の存続の危機」を先ほど挙げました。
もちろんこれも大きな理由なのですが、その他に「バックに大国がついているから」という理由もあります。
そのバックについている大国こそがイギリスです。
そもそもタックスヘイブンを始めた国がイギリスであるため、現在でもタックスヘイブン国や地域の多くはイギリス領となっています。
その歴史は19世紀ごろまで遡ります。
アフリカやアジアなど多くの場所を植民地としていたイギリスは、植民地への投資を増やすために税率を下げ、海外からの投資先として選ばれるようなシステムを作り上げました。
これが今のタックスヘイブンの始まりです。
現在世界中で論争を巻き起こしているタックスヘイブンは、大英帝国が作り上げたものだったのです。
ロンドンが世界金融に影響力を持っているのはなぜか?
現在世界中で指標として使われる世界基準通貨は、みなさんご存知のアメリカドルです。
しかし一昔前は、これがポンドだったのをご存知でしょうか。
世界基準通貨がポンドだった、これが現在のロンドンを金融の街として不動の地位にあり続ける理由です。
18世紀から20世紀初期までは、イギリスが世界経済を握っていました。
これは世界で初めて産業革命を起こしたことでもわかります。
世界中から資金を確保し、その資金で確固たる金融システムを構築したイギリスの金本位制は、今も世界の金融業界でのスタンダードとして利用されています。
英国がタックスヘブンを放棄しない理由は?
基準通貨としても採用されていたイギリスのポンドですが、第二次世界大戦をきっかけに、アメリカドルにその地位を奪われてしまいました。
「世界の金融の中心地イギリスもこれで終わりか」とまで言われた時に、イギリスの情勢を支え続けたのがタックスヘイブンです。
タックスヘイブンによって経済を支え、またその資金によって大きく躍進することに成功したイギリスは、タックスヘイブンを手放すことはないといっても良いでしょう。
タックスヘイブンを始めたのはイギリスであり、またそのタックスヘイブンで救われたのもイギリスなのです。
日本はアメリカの次に55兆円をケイマン諸島へ投資している
「タックスヘイブンと日本の関係とは?」では述べたように、日本はケイマン諸島だけでも55兆円もの国益を失っています。
またそれ以外にも、タックスヘイブンで大きな金額を失っていることがわかるデータがあります。
東証に上場している企業のトップ50社のうち、タックスヘイブンを利用している企業は45社もあるとされています。
タックスヘイブン先に設立した子会社数は354社、その資本金の総額は8.7兆円にもなるのです。
また有価証券報告書を調べた結果、タックスヘイブン利用企業のトップ5が公開されました。
-
・1位:みずほフィナンシャルグループ:45社
-
・2位:ソニー:34社
-
・3位:三井住友フィナンシャルグループ:27社
-
・3位:三井物産:27社
-
・5位:三菱商事:24社
ご覧のように、銀行や商社がその多くを占めます。
この中で特にケイマン諸島の利用が多いのが三井住友フィナンシャルグループです。
同社はケイマン諸島だけで18社もの子会社を持っており、その資本金は3兆円になります。
また国が出資しているNTTやJTも、タックスヘイブンを利用して多額の資産を投資しているとされています。
タックスヘイブンの3つの指標とは?
タックスヘイブンの共通点として先ほど4つの項目を挙げましたが、「これが揃えばタックスヘイブンである」とされる3つの指標があります。
1つ目が「税率が低いこと」、2つ目が「法的規制が緩いこと」、これは共通点ても挙げた項目です。
そして3つ目の指標となるのが「透明性が欠如していること」です。
これは「秘匿性が高い」と似ていることではありますが、「情報公開を希望しても受け入れられない」という意味で少し違うでしょうか。
秘匿性の高さでは「第三者名義でも設立可能」などの恩恵が挙げられますが、透明性の欠如の場合は、「秘密保護法などの法律で守られている」のです。
これを守秘法域と呼びますが、この守秘法域であることが、タックスヘイブン先であるとされる大事な指標になります。
タックスヘイブンは世界中に存在する
3つの指標を兼ね備えたタックスヘイブンは世界中に存在します。
下記の画像を参考に見てみましょう。
このようにその多くはヨーロッパや、イギリス領となる場所です。
また「租税特典国」もタックスヘイブンとして考えられるため、弱小国以外のスイスやニューヨークなどもタックスヘイブン先となります。
タックスヘイブン『ケイマン諸島』について知りたいなら
観光地として考えるのであればマイナーな場所です。
知らない人も大勢いらっしゃるでしょう。
しかしタックスヘイブン先として見るのであれば、ここより有名な場所はないかもしれません。
それほど多くの企業や富裕層に利用されているのが、ここケイマン諸島です。
タックスヘイブンを語る上でこの島の名前を外すことはできません。
ケイマン諸島は世界中から利用されていますが、日本だけでも、このケイマン諸島に14兆円にも及ぶ巨額のお金が流出しているのです。
これは消費税の7%分にも相当する額です。
この小さな島がなぜタックスヘイブンとしてそれほど人気なのか、ケイマン諸島の税制はどうなっているのかなどは、下記の記事で詳しく紹介されています。
ケイマン諸島にはタックスヘイブンであるが故の驚きの数字がたくさんありますので、こちらも併せて知ることで、よりタックスヘイブンを理解することができるでしょう。
「税金なしの天国?タックスヘイブン「ケイマン諸島」のメリットは?」
違法ではないが色々リスクがあるのがタックスヘイブン
ここまでタックスヘイブンについて、様々な観点からご紹介させて頂きました。
パナマ文書流出事件のイメージから、タックスヘイブン=脱税、もしくは悪であると思われている方も多いかもしれません。
しかし「自国とタックスヘイブン先の法律を守った上で行う」ことさえ守れば、タックスヘイブンは違法ではなく正規の節税方法なのです。
今後タックスヘイブンそのものが禁止されることはないでしょう。
しかしその分規制が厳しくなることが予想されています。
それに加え「税金逃れ」だと非難されることもなくならないと思われます。
タックスヘイブンは大きな節税効果をもたらすものですが、企業のイメージや規制の強化など、高いリスクがついて回る方法だということを覚えておきましょう。
関連記事
この記事が気に入ったらいいね!しよう
マネストの最新エントリーが見られます。
Twitterでマネストをフォローしよう! @ManeSto_comさんをフォロー