最近よく耳にするタックスヘイブンやパナマ文書について分かりやすく解説!
「パナマ文書とは何かわかりますか?」
そう聞かれて全てを答えられる人は少ないかもしれません。
しかし「パナマ文書流出事件は知っていますか?」と聞かれたらどうでしょうか。
加熱する報道機関によって、一時期嫌というほど耳にした事件だったのではないかと思います。
ではなぜあんなにも騒動になったか、それはパナマ文書が「犯罪を暴く重要な最高機密情報だったから」に他なりません。
今回はこのパナマ文書について、分かりやすく解説していきたいと思います。
良く聞くパナマ文書について
パナマ文書とは?
そもそもパナマ文書とは、中央アメリカの国のひとつ、パナマにある「モサック・フォンセカ」という法律事務所が作成した書類のことです。
この書類には、1970年から行われたモサック・フォンセカ事務所と顧客との間でやり取りされた詳しい内容が、1,150件という膨大な数で記載されていました。
ではその内容のどこがそんなにも問題視されたのか、それは記載されている情報が「租税回避利用者」の名前が多く含まれていたためです。
租税回避とはいわば脱税のようなもので、これは犯罪行為に当たります。
つまり「パナマ文書には犯罪者の情報が載っていた」、このせいで、一躍世界中を駆け巡る大きな事件へと発展したのです。
さて、なぜパナマ文書流出事件が重要視される問題だったのかをおわかり頂けたところで、なぜ流出事件が起きたのか、この点について触れていきましょう。
まだ記憶に新しいパナマ文書流出事件は、2015年に起こりました。
それは南ドイツ新聞社にパナマ文書のデータが届けられたことがきっかけです。
しかし、情報内容量が2.6テラバイトにも及んだこの膨大なデータを見た南ドイツ新聞社はこう判断します。
「これは我々だけで扱えるものではない」
そう感じた南ドイツ新聞社は、ICIJ(国際調査報道ジャーナリスト連合)にデータを送ったのです。
ICIJには各国の報道機関が1社~2社必ず加盟しているため、一気に世界中の報道関係者に知られるところとなりました。
では誰が南ドイツ新聞社にそのデータをリークしたのでしょうか。
これについては明らかにされていません。
なぜならそれを公開されると、情報を流した方の命に係わる問題になるためです。
これは2017年10月16日に実際に起こった事件です。
マルタ共和国で、パナマ文書を使い政府を追求していた女性ジャーナリストのダフネ・カルアナ・ガリチアさんが、車に爆弾を仕掛けられ殺害されるという悲惨な事件が起こりました。
このことからも、パナマ文書を最初にリークした方の情報は一切公開されていません。
ただひとつだけ、何故リークする気になったのか、それだけは声明を発表しています。
それは「犯罪を公にしたい」その気持ちのみだったそうです。
それを証明するかのように、このリーク者は大スクープであるこの情報源に一切の金銭の要求はしていません。
つまりリーク者本人も、パナマ文書の中身には犯罪者の情報があることを認知していたことになります。
そしてパナマ文書の中身がどれだけ重要性の高いものかを認識したICIJは、80か国の国々から400人以上のジャーナリストを集め、1年以上もこの情報の裏付けを捜査し続けたのです。
そんな努力が実り、皆さんの耳に届くきっかけともなる「パナマ文書」の公開が2016年4月3日に行われました。
パナマ文書流出事件はなぜ起こったのか、それは「犯罪を公にしたい」というリーク者を始め、「正しい情報を公開したい」というICIJの400人以上のジャーナリスト達の正義感で実現したのです。
パナマ文書には多くの著名人や有名企業の名前も記載されている
パナマ文書流出事件をきっかけとして、世界中からタックスヘイブンへの注目が集まることになりました。
もちろんその中には犯罪組織であったり、犯罪の温床として利用されていたことが判明していますが、その一方で、タックスヘイブンや投資を目的としたもの、つまり犯罪行為ではなく利用したとされる著名人たちの名前も公開されることになったのです。
大きな事件として扱われた要人といえば、やはりアイスランドのグンロイグソン首相が挙げられるでしょう。
彼はバージン諸島に、日本円で数億円にも及ぶ資産を隠し持っていたことが明るみに出ました。
これに反発した国民からの声を受け、2016年4月に首相を退任するまでに追い込まれ大きな話題となりましたね。
他にもパキスタンのナワズ・シャリフ首相、彼も2017年7月に退任せざるを得なくなっています。
その理由は、息子と娘がタックスヘイブンに子会社を持っていたためです。
このように直接本人の名前があったわけではありませんが、責任を問われることになった事例は他にもあります。
中国の習近平国家首席の場合は、義理の兄がバージン諸島に法人会社を設立しているとし、国外から多大な注目を浴びました。
また退任とまではいきませんが、ウクライナのポロシェンコ大統領やサウジアラビアのサルマン国王などがタックスヘイブンを利用していたと指摘されています。
「とばっちり」というかたちで名前を報道されたのは、ロシアのプーチン大統領が挙げられます。
大統領の古くからの友人が、バージン諸島を利用し約20億ドル(日本円でおよそ2,200億円)の金融取引を行っていたとされ、多くの報道陣に囲まれていたのを見た方もおられると思います。
このようにパナマ文書流出事件によって暴かれた著名人の中には、犯罪行為に当たらない理由で利用した各国の首脳陣の名前が公開されることになったのです。
また著名人以外にも、企業の名前も公開されています。
例えば誰もが知る大企業として、アップル・グーグル・アマゾン・マイクロソフト・スターバックスなどの一流企業も、このタックスヘイブンを利用して税金逃れをしていたことが明かになりました。
タックスヘイブンは犯罪ではなく合法なのですが、自国に納税を行わない、もしくは少額で済ませることになることからも、「国益を失う行為」とし問題視されることが多いのです。
このことからも、タックスヘイブンは「あまり歓迎される行為ではない」ということがわかるでしょう。
その中には日本の企業や日本の著名人も含まれている
上記では海外の著名人や要人の名前を挙げましたが、実はパナマ文書には、日本企業や日本人の名前も多く記載されていました。
しかし日本政府は「パナマ文書を調査することはない」としています。
そのため記載されていたその全てを知ることはできませんが、分かっている企業や人物名を挙げてみましょう。
【企業名】
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・伊藤忠商事
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・丸紅
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・ファーストリテイリング(ユニクロやGUなどの親会社)
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・ソフトバンクの関連企業
【人物名】
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・楽天社長の三木谷浩史氏
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・セコム創業者の飯田亮氏
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・詐欺師として検挙された経歴を持つ宮本敏幸氏
それぞれインタビューには「違法性はない」とコメントしています。
しかしタックスヘイブンそのものが歓迎されることではないため、明らかなイメージダウンをしたのは言うまでもありません。
タックスヘイブンよる節税は厳しくなってきている
今回はタックスヘイブンが注目されるきっかけともなったパナマ文書についてご紹介してきました。
繰り返しになりますが、タックスヘイブンは違法ではありません。合法です。
しかしどうしても「税金逃れ」と見られることが多く、問題視される声も途切れることはないのです。
またその声に伴い、近年ではタックスヘイブンに対する税制規制も厳しくなってきています。
大幅な節税効果を生む方法ながらも、タックスヘイブンによる節税はリスクの高い方法だと認識しておきましょう。
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