スターバックス社が活用した節税スキームとはどんな方法?
タックスヘイブンを上手に活用し法人税を大幅に抑えている企業は数多く存在しますが、日本でも人気の高い企業、スターバックス社もそのひとつです。
イギリスでの自主的納税などで話題になったことで、スターバックス社とタックスヘイブンの関係を耳にしたこともあるでしょう。
スターバックス社が取った方法とはどのようなものだったのか、またその行為に違法性はなかったのかなど、スターバックス社が利用した節税方法について、詳しくご紹介していきましょう。
スターバックス社が活用した国際的な租税回避スキームとは?
イギリスのスターバックスは14年間利益ない
アメリカのワシントン州シアトルで産声を上げたスターバックスは、1998年にイギリスへ進出しました。
しかしそれ以来、累計30億ポンド(約5100億円)の売上を上げてきましたが、法人税の支払いは860万ポンド(約15億円)のみしかなかったのです。
これは売上の約0.3%という小さな金額でしかありません。
またイギリスでは過去15年間のうち、14年間利益が出ていないということになっていました。
これはイギリスでだけでなく、フランスやドイツでも同じです。
つまりスターバックスは、各国で過去10年間、税金を納めていなかったのです。
この2点だけを見る限り、それは違法行為のように見えてしまいますね。
しかしスターバックス社が取った節税対策は、きちんと法に則った合法だったのです。
次項でその方法を詳しくご紹介しましょう。
各国の利益を優遇税制のあるスイスに集結していた
それぞれの国で納税をしていなかったスターバックスですが、実はこれは違法ではありません。
スイスとオランダの税制を利用した、合法の節税スキームの効果なのです。
これは下記の画像を見た方がわかりやすいでしょう。
これを見てもわかるように、スターバックス社が取った節税スキームはひとつではありません。
複数の方法を組み合わせて行っていたのです。
最初のポイントなるのは、各国の利益をスイスに移転していたということです。
スターバックス社が取り扱う豆の取引量のうち、75%もの取引をスイスで行います。
その後世界中の店舗に豆を届けることになるのですが、それをただの「配達」ではなく、「販売する」というかたちを取ったのです。
また販売する際には、原価に20%上乗せした金額で販売しました。
そうすることで、豆の75%にあたる取引利益、また世界中の店舗から入る20%上乗せ分の利益の2つを、スイスに集めることに成功したのです。
もちろんこのスイスの子会社はスイスの法人税率が適用されますので、12.5%の課税率だけで済みます。
スターバックスの商標は米国本社のものではない?
またスイスの子会社を利用した利益の移転以外にも、もうひとつ大事な節税スキームがあります。
それがスターバックスの商標は、現在アメリカ本社からオランダ法人に移転しているということです。
これを説明するには、日本の特許システムをイメージするとわかりやすいかもしれません。
世界中のスターバックス店では、ドリンクを作るたびに、その権利を持つオランダにライセンス料の支払いを行うことになります。
つまりスターバックスでは、「商標を利用させてもらっている」というかたちで、ライセンス料を支払うことで利益を圧縮し、法人税の課税対象額を減らしているのです。
またもちろんオランダ法人はオランダの法人税率で課税されることになりますので、16%の課税率だけで済みます。
ちなみにこれにはもうひとつ、オランダならではの優遇税制を利用している節税スキームもあります。
これに関しては、「ライセンス料はオランダだけに支払われるわけではない」ということがポイントになります。
最初にオランダに支払われるライセンス料ですが、実はそのうちの半分はアメリカに支払うことになっています。
しかしオランダには「ライセンス料の支払いは非課税」という優遇税制があるため、「オランダ法人からのライセンス料の支払い」というかたちでアメリカにお金を送れば、その金額に一切の税金がかからないのです。
つまり世界中のスターバックス店から支払われるライセンス料は、半分が16%のオランダ課税、もう半分はアメリカに非課税で取り入れているというわけです。
スターバックス社が行った節税スキームをまとめてみましょう。
-
・豆の取引量のうち75%を、法人税率12.5%のスイスで行う
-
・その豆に原価から20%上乗せして各店舗に販売する
-
・知識やレシピなどの無形資産をオランダ法人に移転した
-
・ライセンス料の半分はオランダの法人税率16%が適用、もう半分はアメリカへの送金で非課税にした
このように多くの方法を取ることで、法人税負担率を売り上げの0.3%にまで抑えるという節税スキームが作られていたのです。
スターバックス社は自主的に納税をした
スターバックスは、2013年からの2年間、イギリスで法人税支払いとして合計2,000万ポンドの納税を行うこととしました。
これは自主的に行われたものですが、その理由が他の企業の影響です。
この影響を与えた企業が、同じアメリカ企業として有名なマクドナルドとケンタッキーでした。
各社のイギリスでの納税額を見てみましょう。
【マクドナルド】
-
・売上:36億ポンド(約6100億円)
-
・納税額:8,000万ポンド(約140億円)
【ケンタッキー】
-
・売上:11億ポンド
-
・納税額:3,600万ポンド
この事実を知ったため、スターバックスは自主的に納税を行ったのです。
トヨタ自動車が売上の大半を課税対象外に出来ている理由
利益が出ているのに法人税払っていないのは何故?
みなさんもご存知の大企業トヨタは、2015年度の連結決算で最終利益が2兆円を超えています。
しかし2009年から2013年まで、トヨタは日本国内の法人税を払っていないのです。
トヨタの節税対策は国が合法的に認めているもの
「納税していないのは犯罪」そう感じるかもしれませんが、実はトヨタがとった方法は違法ではなくあくまでも「節税」であり、国が認める合法的なものです。
その方法とは、日本の税制「外国子会社からの受取配当の益金不算入」を利用したものでした。
この制度は「外国の子会社からの配当金は95%を課税対象外とする」というものです。
つまりトヨタの利益の大半が海外で計上されたものとしたため、日本では課税対象にはならなかったのです。
グローバル企業は更に工夫して節税している
トヨタ以外にも、Googleやアップルも大幅な節税を果たしています。
しかし海外企業であるため日本の「外国子会社からの受取配当の益金不算入」は利用できません。
そこで利用したのが「ダブルアイリッシュ・ダッチサンドウィッチ」という節税スキームです。
こちらの節税方法については下記の記事で詳しく紹介されていますので、こちらを参考にしてみましょう。
タックスヘイブンによる節税はだんだんと厳しくなってきている!
パナマ文書流出事件以降、タックスヘイブンへの注目が高まり、それと同時にタックスヘイブン規制も厳しくなりました。
この規制をかいくぐり恩恵を受けるのは、今後更に難しくなっていくと予想されています。
もしあなたがタックスヘイブンを活用し節税を行いたいと思うのであれば、規制の数々をしっかりと理解し、メリット・デメリットを把握してから行うようにしましょう。
関連記事
この記事が気に入ったらいいね!しよう
マネストの最新エントリーが見られます。
Twitterでマネストをフォローしよう! @ManeSto_comさんをフォロー