アメリカのタックスヘイブン『デラウェア州』とは?
タックスヘイブンとは、無課税、もしくは著しく税率の低い国や地域のことを指します。
そんな「税率が低い地域」がアメリカにあることをご存知ですか?
それはアメリカのデラウェア州です。
今回はこのデラウェア州がタックスヘイブンであることについて、詳しくご紹介していきましょう。
世界経済の中心『アメリカ』にもタックスヘイブンがある!
アメリカのデラウェア州がタックスヘイブンである
アメリカ国内にもタックスヘイブンは存在します。
それがデラウェア州です。
なんとこの州の人口が89万7934人なのに対し、企業数は94万5326社もあるのです。
その理由は2つあります。
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「企業に優しい風潮」と称された企業に特化した司法制度があること
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企業弁護士や経営者を優遇する法律が多いこと
この理由により、デラウェア州には租税回避者が多く集まっています。
アメリカが金融秘密度ナンバーワン?
タックスヘイブンに反対する英民間団体「タックス・ジャスティス・ネットワーク(TJN)」が2009年に「金融秘密度指数ランキング」を発表しました。
それによると、ルクセンブルクとスイスを抑えてアメリカが1位だったのです。
その理由はアメリカにはデラウェア州があるためです。
「われわれの分析では、アメリカは最も深刻な地域の1つだ。改善はほとんど進んでおらず、透明性向上の取り組みの脅威となっている」
「秘密度指数が2015年の6位から3位に上昇した米国は、2013年以降に評価が悪化した数少ない国のひとつだ」
州の収入の4割がペーパー企業にからむ収入である
なぜデラウェア州が重宝されるのか、それは、秘匿性の高さです。
デラウェア州でペーパーカンパニーを設立する時に、実質所有者の情報は必要とされません。
なんと多くの場合が、設立を助言する弁護士らが名義上の代表者になるのです。
そのため誰が所有する法人なのか州当局でさえ把握できない状況です。
「実質所有者は秘匿性の高さに守られる」、この理由により、デラウェア州の収入の4割が、ペーパーカンパニー関連の収入だと言われています。
規制強化に反対する勢力がいる
オバマ元大統領も、このデラウェア州への規制を望んでいました。
しかし会社法などの関係法制は、国の連邦政府ではなく、州政府の権限だったため、中々規制強化には繋がらなかったのです。
しかし昨今になってようやく、銀行などの金融機関に、実質的所有者の情報把握を求める規制強化案が議会に提出されました。
アメリカ国内にも、デラウェア州がタックスヘイブンであることに反対する勢力は存在するのです。
デラウェア州は全米一の規制が緩い
アメリカで企業への規制の緩い地域はデラウェア州が一番
デラウェア州はアメリカで2番目に小さい州でありながらも、2007年に上場した法人の9割が、ここデラウェア州に登記しています。
それは上記でも述べたように、企業への規制がアメリカ1緩いためです。
デラウェア州法は経営者に有利にできている
デラウェア州では、2003年に衡平裁判所の管轄権を拡大する法律を制定しました。
これにより、なお経営者に有利な法が制定される州になったのです。
J・ロバート・ブラウン(デンバー大の教授)
「デラウェアの裁判所は、利己的な取引に対する制限を、ほとんど廃止してしまった」
つまり一般市民や株主から訴えられたとしても、経営者が勝利しやすくなる法律になったということです。
デラウェア州の法人税率について
デラウェア州の法人税は8.7%です。
アメリカ法人が納める平均法人税が25%であるとされていますので、およそ1/3で済むということになります。
デラウェア州で法人を立ち上げるメリット・デメリット
デラウェア州で法人を立ち上げるメリットとは?
デラウェア州で法人を立ち上げるメリットは、様々な面で金銭的メリットが大きいことです。
例えばデラウェア州には「最低賃金制度」というものが存在しませんので、たったの1ドルでも株式会社を設立することができます。
それと同時に現地に事務所を構える必要もありませんし、役員も1人で問題ありませんので、会社設立のあらゆる費用の削減にもなるでしょう。
ちなみにデラウェア州では法人維持費も格安ですので、立ち上げることも維持することも安く済ませることができます。
金銭面以外でのメリットといえば、上記でもご紹介した企業側に有利な法人制度があることはもちろん、日本に営業所を設置するだけで株式会社を名乗れることもそうでしょう。
株主や財務状況の情報が第三者に公開されることはありませんので、秘匿性の高さもある種のメリットと言えます。
ちなみにデラウェア州で法人を設立する際は、デラウェア州に居住している必要はありません。
非居住者でも法人設立が可能です。
またデラウェア州に設立したものの日本でのみ営業を行う場合は、デラウェア州に納税する必要はないので覚えておきましょう。
デラウェア州で法人を立ち上げるデメリットとは?
デラウェア州で法人を立ち上げるデメリットは、いくら安いと言えど毎年発生する各種の費用でしょうか。
法人設立の翌年から毎年かかる費用には、下記のようなものが挙げられます。
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・登記維持(更新)税
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・本社住所貸与費用
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・行政書類受渡費用
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・米国申告事務費用
これらの費用が、例え利益がゼロであってもかかり続けるのです。
またこれは経営が上手くいかない時に困るデメリットかもしれませんが、公的資金の借り入れや融資が、日本法人と比べて利用しにくい場合が考えられます。
審査に通りにくい・書類が複雑・言葉の壁など様々な要因が考えられますが、万が一の場合には頭を悩ませることになるかもしれません。
ちなみに日本の会社とデラウェア州の会社、どちらともに売り上げが発生した場合には、両方の国で決算報告と納税を行わねばなりません。
決して二重課税になることはありませんが、多少複雑な経理処理を必要としますので、専門的な知識を持つ人間が必要になるでしょう。
他には日本で営業所を設置する登記を行う際にも、気を付けなければならないことがあります。
それが商号はすべてカタカナもしくはローマ字になるということです。
また登記簿上では「株式会社」と記載されることはありません。
タックスヘイブンへの対策は厳しくなってきている
税制の違いによってアメリカ国内にもタックスヘイブンとしてデラウェア州が存在することに、驚かれた方も多いことでしょう。
元大統領のオバマ氏も大きく問題視するなど、アメリカ国内でも賛否両論の討論が続いています。
また今回ご紹介した以外にも、日本にもタックスヘイブン税制対策は存在します。
つまり海外に法人を設立する際には、その国の税制制度はもちろん、日本の規制にも注意せねばならないのです。
日本のタックスヘイブン税制対策は年々厳しくなってきており、その傾向は今後も続くと予想されています。
もしタックスヘイブンを目的とした海外法人設立をお考えなのであれば、これらの規制をしっかりと理解してから行うようにしましょう。
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