保険に加入する上で知っておきたい!法人保険のしくみと経理処理方法
会計上と税法上の違いを把握しよう!
会社のお金に関する言葉には、「会計上のもの」と「税務上のもの」があります。
この違いをしっかりと把握しておかねば、適切な経理処理が行えない場合があるのです。
そこで今回は法人保険に関する経理処理について、詳しくご紹介していきましょう。
保険積立金はどう経理処理するの?
保険積立金について
保険には、万が一に備える「保険部分」と、満期時に支払われる「貯蓄部分」があります。
保険料は、この「保険部分」と「貯蓄部分」で区別されることになります。
-
・保険部分:支払保険料などの勘定科目で損金計上
-
・貯蓄部分:保険積立金などの勘定科目で資産計上
貯蓄部分が損金にならない理由は、銀行預金等と同じ効果があると見られるためです。
定期保険や長期平準定期保険や逓増定期保険の場合について
長期平準定期保険や逓増定期保険を含む定期保険には、「貯蓄部分」と呼ばれる部分はありません。そのため定期保険の保険料は、上記でもご紹介したように「支払保険料などの勘定科目で損金計上」のみになります。
ただし長期平準定期保険や逓増定期保険では、途中で解約すると解約返戻金と呼ばれる保険金が支払われるこになります。そのため解約返戻金がある長期平準定期保険や逓増定期保険の会計処理は、下記のように行わねばなりません。
【保険期間最初の6割の期間】
保険料のうち所定の割合は資産計上し、残りの部分は損金計上にします
【保険期間残りの4割の期間】
保険料は全額損金計上し、資産計上していた保険料を、残りの保険期間で均等に割り損金計上にします
経理処理をする上で知っておきたい損金について
上記で何度も出てくる「損金」は、会社の経費ともいえる部分で、節税対策に欠かせない重要な言葉です。法人保険の損金に関する情報は、下記の記事でより詳しく紹介されていますので、こちらも併せて参考にしてみましょう。
節税する上で知っておきたい!法人保険の損金の仕組みとタイプについて解説
生命保険の保険金等受取時の税務と経理について
保険金受取時を受取人別の経理処理について
【受取人が会社の場合】
-
・資産計上されている保険料積立金や前払保険料がない場合
-
→ 保険金全額を雑収入として益金算入
-
・資産計上されている保険料積立金や前払保険料がある場合
-
→ 資産計上されている保険料積立金と保険金との差額を雑収入として益金算入
【受取人が遺族の場合】
-
・資産計上されている保険料積立金や前払保険料がない場合
-
→ 経理処理は不要
-
・資産計上されている保険料積立金や前払保険料がある場合
-
→ 資産計上されている保険料積立金等と同額を雑損失として損金算入
入院や手術給付金等受取時の受取人別の経理処理について
【受取人が会社の場合】
-
・保険金全額を雑収入として益金算入
【受取人が従業員の場合】
-
・経理処理は不要
解約返戻金受取時の経理処理について
【資産計上されている保険料積立金や前払保険料がない場合】
-
・保険金全額を雑収入として益金算入
【資産計上されている保険料積立金や前払保険料がある場合】
-
・資産計上されている保険料積立金と保険金との差額を雑収入として益金算入
【タイプ①】終身保険の経理処理について
終身保険をタイプ別で分ける
終身保険は2つのタイプに分類することができます。
契約形態 |
税務 |
||||
タイプ |
契約者 |
被保険者 |
死亡保険金受取人 |
終身保険分 |
特約分 |
1 |
法人 |
従業員 |
法人 |
資産計上 |
損金計上 |
2 |
法人 |
従業員 |
遺族 |
損金計上 |
損金計上 |
ご覧のように、受取人が異なることで、経理処理も変わるのです。
経理ではこう処理する!「終身保険」
保険料支払い時の仕訳について
ここではわかりやすいように、下記の例で見てみましょう。
-
・年払保険料300万円を支払った場合
-
・内訳
-
・終身保険の保険料:2,800,000円
-
・特約の保険料:200,000円
タイプ1の保険金受取人を法人としたケースの場合
借方 |
貸方 |
||
保険料積立金(資産の増加) |
2,800,000円 |
現金または預金(資産の減少) |
3,000,000円 |
特約保険料(費用の発生) |
200,000円 |
タイプ2の保険金受取人を役員や従業員の遺族としたケースの場合
借方 |
貸方 |
||
給与・報酬(費用の増加) |
2,800,000円 |
現金または預金(資産の減少) |
3,000,000円 |
福利厚生費(費用の発生) |
200,000円 |
【タイプ②】養老保険の経理処理について
養老保険をタイプ別で分ける
養老保険はタイプ別に4つに分けることができます。
契約形態 |
税務 |
|||||
タイプ |
契約者 |
被保険者 |
保険金受取人 |
養老保険分 |
特約分 |
|
死亡保険金 |
満期保険金 |
|||||
1 |
法人 |
従業員 |
法人 |
法人 |
資産計上 |
損金計上 |
2 |
法人 |
従業員 |
遺族 |
遺族 |
損金計上 |
損金計上 |
3 |
法人 |
従業員 |
遺族 |
法人 |
1/2資産計上 1/2損金計上 |
損金計上 |
養老保険でも、受取人がどうなるかで、保険料の経理処理が異なります。
経理ではこう処理する!「養老保険」
保険料支払い時の仕訳について
わかりやすいように、下記の例で見てみましょう。
-
・年払保険料300万円を支払った場合
-
・内訳
-
→ 終身保険の保険料:2,800,000円
-
→ 特約の保険料:200,000円
タイプ1の保険金受取人(死亡・満期)を法人としたケースの場合
借方 |
貸方 |
||
保険積立金(資産の増加) |
2,800,000円 |
現金または預金(資産の減少) |
3,000,000円 |
特約保険料(費用の発生) |
200,000円 |
タイプ2の死亡保険金受取人を役員や従業員の遺族で満期保険金受取人を役員や従業員としたケースの場合
借方 |
貸方 |
||
給与・報酬(費用の増加) |
2,800,000円 |
現金または預金(資産の減少) |
3,000,000円 |
福利厚生費(費用の発生) |
200,000円 |
タイプ3の死亡保険金受取人を役員や従業員の遺族で満期保険金受取人を法人としたケースの場合
借方 |
貸方 |
||
保険積立金(資産の増加) |
1,400,000円 |
現金または預金(資産の減少) |
3,000,000円 |
福利厚生費(費用の発生) |
1,600,000円 |
【タイプ③】定期保険の経理処理について
定期保険をタイプ別に分ける
定期保険は、保障期間によって4つのタイプがあります。
まずは一般的な期間での2種類です。
契約形態 |
税務 |
||||
タイプ |
契約者 |
被保険者 |
死亡保険金受取人 |
定期保険分 |
特約分 |
1 |
法人 |
従業員 |
法人 |
損金計上 |
損金計上 |
2 |
法人 |
従業員 |
遺族 |
損金計上 |
損金計上 |
保険期間が長期の定期保険をタイプ別に分ける
次に期間が長期間になるタイプでの2種類です。
契約形態 |
税務 |
||||
タイプ |
契約者 |
被保険者 |
受取人 |
定期保険分 |
特約分 |
3 |
法人 |
従業員 |
法人 |
|
損金計上 |
4 |
法人 |
従業員 |
遺族 |
|
損金計上 |
長期間になると、定期保険分の経理処理が複雑になります。
経理ではこう処理する!「定期保険」
定期保険の保険料支払い時の仕訳について
わかりやすいように、下記の例で見てみましょう。
-
・契約年齢:50歳
-
・保険期間:70歳満了
-
・保険料払込期間:70歳まで
-
・年払保険料200万円を支払った場合
-
・内訳
-
→ 定期保険の保険料:1,800,000円
-
→ 特約保険料:200,000円
タイプ1の保険金受取人を法人としたケースの場合
借方 |
貸方 |
||
定期保険料(費用の増加) |
1,800,000円 |
現金または預金(資産の減少) |
2,000,000円 |
特約保険料(費用の発生) |
200,000円 |
タイプ2の保険金受取人を役員や従業員の遺族としたケースの場合
借方 |
貸方 |
||
福利厚生費(費用の増加) |
1,800,000円 |
現金または預金(資産の減少) |
2,000,000円 |
保険期間が長期の定期保険の保険料支払い時の仕訳について
下記の例で見てみましょう。
-
・契約年齢:50歳
-
・保険期間:80歳満了
-
・保険料払込期間:80歳まで
-
・年払保険料240万円を支払った場合
-
・内訳
-
→ 定期保険の保険料:2,000,000円
-
→ 特約保険料:400,000円
タイプ3の保険金受取人を法人としたケースの場合
【最初の6/10の期間(18年間)】
借方 |
貸方 |
||
定期保険料 (費用の発生) |
1,000,000円 (損金算入) |
現金または預金 (資産の減少) |
2,400,000円 |
前払保険料 (資産の増加) |
1,000,000円 (資産計上) |
||
特約保険料 (費用の発生) |
400,000円 |
【4/10の期間(19年目以降の12年間)】
借方 |
貸方 |
||
定期保険料 (費用の発生) |
3,500,000円 |
現金または預金 (資産の減少) |
2,400,000円 |
特約保険料 (費用の発生) |
400,000円 |
前払保険料 (資産の減少) |
1,500,000円 |
タイプ4の保険金受取人を役員や従業員の遺族としたケースの場合
【最初の6/10の期間(18年間)】
借方 |
貸方 |
||
福利厚生費 (費用の発生) |
1,000,000円 (損金算入) |
現金または預金 (資産の減少) |
2,400,000円 |
前払保険料 (資産の増加) |
1,000,000円 (資産計上) |
||
特約保険料 (費用の発生) |
400,000円 |
【4/10の期間(19年目以降の12年間)】
借方 |
貸方 |
||
福利厚生費 (費用の発生) |
3,500,000円 |
現金または預金 (資産の減少) |
2,400,000円 |
特約保険料 (費用の発生) |
400,000円 |
前払保険料 (資産の減少) |
1,500,000円 |
保険期間が長期の定期保険で保険料払込期間が保険期間の6/10より短い場合
下記の例で見てみましょう。
-
・契約年齢:40歳
-
・保険期間:80歳満了
-
・保険料払込期間:60歳まで
-
・年払保険料160万円を支払った場合
-
・契約者:法人
-
・被保険者:従業員
-
・死亡保険金受取人:法人
【保険料払込期間中(20年間)】
当期分保険料相当額は、1,600,000円×20年/40年で800,000円になります。
借方 |
貸方 |
||
定期保険料 (費用の発生) |
400,000円 (損金算入) |
現金または預金 (資産の減少) |
1,600,000円 |
前払保険料 (資産の増加) |
1,000,000円 (資産計上) |
||
前払保険料 (資産の増加) |
400,000円 (資産計上) |
【保険料払込期間満了から保険期間の6/10経過まで(21年目以降の4年間)】
借方 |
貸方 |
||
定期保険料 (費用の発生) |
400,000円 (損金算入) |
前払保険料 (資産の減少) |
600,000円 |
前払保険料 (資産の増加) |
400,000 (資産計上) |
前払保険料 (資産の減少) |
800,000円 |
【保険期間の残りの4/10の期間(25年目以降の16年間)】
借方 |
貸方 |
||
定期保険料 (費用の発生) |
1,400,000円 |
前払保険料 (資産の減少) |
600,000円 |
前払保険料 (資産の減少) |
800,000円 |
保険期間が長期の定期保険で保険料払込期間が保険期間の6/10より長い場合
下記の例で見てみましょう。
-
・契約年齢:30歳
-
・保険期間:80歳満了
-
・保険料払込期間:65歳まで
-
・年払保険料60万円を支払った場合
-
・契約者:法人
-
・被保険者:従業員
-
・死亡保険金受取人:法人
【最初の6/10の期間(30年間)】
当期分保険料相当額は、600,000円×35年/50年で420,000円になります。
借方 |
貸方 |
||
定期保険料 (費用の発生) |
210,000円 (損金算入) |
現金または預金 (資産の減少) |
600,000円 |
前払保険料 (資産の増加) |
210,000円 (資産計上) |
||
前払保険料 (資産の増加) |
180,000円 (資産計上) |
【保険期間の最初の6/10経過から保険料払込期間満了まで(31年目以降の5年間)】
借方 |
貸方 |
||
定期保険料 (費用の発生) |
735,000円 (損金算入) |
前払保険料 (資産の減少) |
600,000円 |
前払保険料 (資産の増加) |
180,000 (資産計上) |
前払保険料 (資産の減少) |
315,000円 |
【保険期間の残りの4/10の期間(25年目以降の16年間)】
借方 |
貸方 |
||
定期保険料 (費用の発生) |
735,000円 |
前払保険料 (資産の減少) |
315,000円 |
前払保険料 (資産の減少) |
420,000円 |
【タイプ⑤】逓増定期保険の経理処理について
逓増定期保険をタイプ別に分ける
逓増保険は4つのタイプに分類できます。
タイプ |
区分 |
保険料の税務 |
|
保険期間の最初の6/10 |
保険期間の残りの4/10 |
||
1 |
下記A |
損金算入 |
損金算入 |
2 |
下記B |
1/2損金算入 1/2資産計上(前払保険料) |
保険料の全額を損金算入し、更に資産計上した前払保険料を残りの期間で割り損金算入 |
3 |
下記C |
1/3損金算入 2/3資産計上(前払保険料) |
|
4 |
下記D |
1/4損金算入 3/4資産計上(前払保険料) |
区分(A~D)の詳細はこちらを参考にしてください。
上記A |
保険期間満了時に被保険者の年齢が45歳以下 |
上記B |
保険期間満了時に被保険者の年齢が45歳超(タイプ3・4に該当する場合は除く) |
上記C |
|
上記D |
|
契約日が2008年2月27日以前の経理処理の逓増定期保険をタイプ別に分ける
2008年2月27日以前の逓増保険は、法改正前の契約になるため、現在の経理処理とはやり方が異なります。
ただ「4タイプに分類される」ことは変わりません。
タイプ |
区分 |
保険料の税務 |
|
保険期間の最初の6/10 |
保険期間の残りの4/10 |
||
1 |
下記A |
損金算入 |
損金算入 |
2 |
下記B |
1/2損金算入 1/2資産計上(前払保険料) |
保険料の全額を損金算入し、更に資産計上した前払保険料を残りの期間で割り損金算入 |
3 |
下記C |
1/3損金算入 2/3資産計上(前払保険料) |
|
4 |
下記D |
1/4損金算入 3/4資産計上(前払保険料) |
ここまでは現在と同じなのですが、区分が異なります。
上記A |
|
上記B |
|
上記C |
|
上記D |
|
経理ではこう処理する!「逓増定期保険」
保険料支払い時の仕訳について
下記の例で見てみましょう。
-
・契約年齢:30歳
-
・保険期間:45歳満了
-
・保険料払込期間:45歳まで
-
・年払保険料50万円を支払った場合
タイプ1の逓増定期保険の経理処理の場合
借方 |
貸方 |
||
定期保険料 (費用の発生) |
500,000円 |
現金または預金 (資産の減少) |
500,000円 |
保険料支払い時の仕訳について
次は下記の数字の場合です。
-
・契約年齢:45歳
-
・保険期間:70歳満了
-
・保険料払込期間:70歳まで
-
・年払保険料75万円を支払った場合
タイプ2の逓増定期保険の経理処理の場合
【最初の6/10の期間(15年間)】
借方 |
貸方 |
||
定期保険料 (費用の発生) |
375,000円 (損金算入) |
現金または預金 (資産の減少) |
500,000円 |
前払保険料 (資産の増加) |
375,000円 (資産計上) |
【残りの4/10の期間(16年目以降の10年間)】
借方 |
貸方 |
||
定期保険料 (費用の発生) |
1,312,500円 |
現金または預金 (資産の減少) |
750,000円 |
前払保険料 (資産の減少) |
562,500円 |
保険料支払い時の仕訳について
次は下記の数字の場合です。
-
・契約年齢:50歳
-
・保険期間:80歳満了
-
・保険料払込期間:80歳まで
-
・年払保険料150万円を支払った場合
タイプ3の逓増定期保険の経理処理の場合
【最初の6/10の期間(18年間)】
借方 |
貸方 |
||
定期保険料 (費用の発生) |
500,000円 (損金算入) |
現金または預金 (資産の減少) |
1,500,000円 |
前払保険料 (資産の増加) |
1,000,000円 (資産計上) |
【残りの4/10の期間(19年目以降の12年間)】
借方 |
貸方 |
||
定期保険料 (費用の発生) |
3,000,000円 |
現金または預金 (資産の減少) |
1,500,000円 |
前払保険料 (資産の減少) |
1,500,000円 |
保険料支払い時の仕訳について
次は下記の数字の場合です。
-
・契約年齢:45歳
-
・保険期間:90歳満了
-
・保険料払込期間:90歳まで
-
・年払保険料220万円を支払った場合
タイプ4の逓増定期保険の経理処理の場合
【最初の6/10の期間(27年間)】
借方 |
貸方 |
||
定期保険料 (費用の発生) |
550,000円 (損金算入) |
現金または預金 (資産の減少) |
2,200,000円 |
前払保険料 (資産の増加) |
1,650,000円 (資産計上) |
【残りの4/10の期間(28年目以降の18年間)】
借方 |
貸方 |
||
定期保険料 (費用の発生) |
4,675,000円 |
現金または預金 (資産の減少) |
2,200,000円 |
前払保険料 (資産の減少) |
2,475,000円 |
逓増定期保険で保険料払込期間が保険期間の6/10より短い場合
下記の例で見てみましょう。
-
・契約年齢:45歳
-
・保険期間:85歳満了
-
・保険料払込期間:60歳まで
-
・年払保険料300万円を支払った場合
-
・契約者:法人
-
・被保険者:従業員
-
・死亡保険金受取人:法人
【保険料払込期間中(15年間)】
当期分保険料相当額は、3,000,000円×15年/40年で1,125,000円になります。
借方 |
貸方 |
||
定期保険料 (費用の発生) |
281,250円 (損金算入) |
現金または預金 (資産の減少) |
3,000,000円 |
前払保険料 (資産の増加) |
843,750円 (資産計上) |
||
前払保険料 (資産の増加) |
1,875,000円 (資産計上) |
【保険料払込期間満了から保険期間の6/10経過まで(16年目以降の9年間)】
借方 |
貸方 |
||
定期保険料 (費用の発生) |
281,250円 (損金算入) |
現金または預金 (資産の減少) |
1,125,000円 |
前払保険料 (資産の増加) |
843,750円 (資産計上) |
【残りの4/10の期間(25年目以降の16年間)】
借方 |
貸方 |
||
定期保険料 (費用の発生) |
2,390,625円 |
現金または預金 (資産の減少) |
1,265,625円 |
前払保険料 (資産の減少) |
1,125,000円 |
逓増定期保険で保険料払込期間が保険期間の6/10より長い場合
次は下記の数字の場合です。
-
・契約年齢:30歳
-
・保険期間:80歳満了
-
・保険料払込期間:65歳まで
-
・年払保険料120万円を支払った場合
-
・契約者:法人
-
・被保険者:従業員
-
・死亡保険金受取人:法人
【最初の6/10の期間(30年)】
当期分保険料相当額は1,200,000円×35年/50年で840,000円になります。
借方 |
貸方 |
||
定期保険料 (費用の発生) |
280,000円 (損金算入) |
現金または預金 (資産の減少) |
1,200,000円 |
前払保険料 (資産の増加) |
560,000円 (資産計上) |
||
前払保険料 (資産の増加) |
360,000円 (資産計上) |
【最初の6/10経過から保険料払込期間満了まで(31年目以降の5年)】
借方 |
貸方 |
||
定期保険料 (費用の発生) |
1,680,000円 (損金算入) |
現金または預金 (資産の減少) |
1,200,000円 |
前払保険料 (資産の増加) |
360,000円 (資産計上) |
前払保険料 (資産の減少) |
840,000円 |
【保険料払込期間満了以降の期間(36年目以降の15年)】
借方 |
貸方 |
||
定期保険料 (費用の発生) |
1,680,000円 |
現金または預金 (資産の減少) |
840,000円 |
前払保険料 (資産の減少) |
840,000円 |
【タイプ⑥】医療保険の経理処理について
給付金受取人が法人の場合をタイプ別に分ける
給付金受取人が法人の場合、4つのタイプに分類されます。
タイプ |
保険期間 |
保険料払込期間 |
保険料の税務 |
|||
死亡保障部分 |
医療保障部分 |
|||||
1 |
定期 |
保険期間と同一 |
損金算入 |
損金算入 |
||
2 |
A |
保険期間と同一 |
最初の6/10の期間 |
B |
損金算入 |
|
残りの4/10の期間 |
C |
損金算入 |
||||
3 |
終身 |
終身 |
資産計上 |
損金算入 |
||
4 |
終身 |
一定期間 (有期) |
資産計上 |
払込期間中 |
D |
|
払込期間満了後 |
E |
A~Eまでは細かくなりますので、下記を参考にしてください。
A |
長期の定期保険として、両方に該当する定期保険です
|
B |
1/2損金算入・1/2資産計上 |
C |
保険料の全額を損金算入し、更にそれまでに資産計上した前払保険料を、残りの期間の経過に応じて割り損金算入します |
D |
計算上の保険期間を105歳までとして、期間按分した金額を損金算入し、残額を資産計上 |
E |
保険料払込期間満了時の資産計上額を105歳まで均等割り損金算入 |
経理ではこう処理する!「医療保険」
保険料支払い時の仕訳について
下記の例で見てみましょう。
-
・契約年齢:40歳
-
・保険期間:70歳満了
-
・保険料払込期間:70歳まで
-
・年払保険料7万円を支払った場合
-
・内訳
-
→ 医療保障部分:60,000円
-
→ 死亡保障部分:10,000円
タイプ1の保険期間が定期の場合
借方 |
貸方 |
||
生命保険料 (費用の発生) |
70,000円 |
現金または預金 (資産の減少) |
70,000円 |
保険料支払い時の仕訳について
次は下記の数字の場合です。
-
・契約年齢:40歳
-
・保険期間:80歳満了
-
・保険料払込期間:80歳まで
-
・年払保険料10万円を支払った場合
-
・内訳
-
→ 医療保障部分:90,000円
-
→ 死亡保障部分:10,000円
タイプ2の保険期間が長期の定期保険に該当する場合
【最初の6/10の期間(24年間)】
借方 |
貸方 |
||
生命保険料 (費用の発生) |
95,000円 (損金算入) |
現金または預金 (資産の減少) |
100,000円 |
前払保険料 (資産の増加) |
5,000円 (資産計上) |
【残りの4/10の期間(25年目以降の16年間)】
借方 |
貸方 |
||
生命保険料 (費用の発生) |
95,000円 (損金算入) |
現金または預金 (資産の減少) |
100,000円 |
前払保険料 (資産の減少) |
7,500円 |
保険料支払い時の仕訳について
次は下記の数字の場合です。
-
・契約年齢:40歳
-
・保険期間:終身
-
・保険料払込期間:終身
-
・年払保険料15万円を支払った場合
-
・内訳
-
→ 医療保障部分:125,000円
-
→ 死亡保障部分:25,000円
タイプ3の保険期間や保険料払込期間が終身の場合
借方 |
貸方 |
||
保険積立金 (資産の増加) |
25,000円 (資産計上) |
現金または預金 (資産の減少) |
150,000円 |
生命保険料 (費用の発生) |
125,000円 (損金算入) |
保険料支払い時の仕訳について
次は下記の数字の場合です。
-
・契約年齢:40歳
-
・保険期間:終身
-
・保険料払込期間:70歳まで
-
・年払保険料18万円を支払った場合
-
・内訳
-
→ 医療保障部分:156,000円
-
→ 死亡保障部分:24,000円
タイプ4の保険期間が終身で保険料払込期間が一定期間の場合
【保険料払込期間中(30年間)】
借方 |
貸方 |
||
保険料積立金 (資産の増加) |
24,000円 (損金算入) |
現金または預金 (資産の減少) |
180,000円 |
生命保険料 (費用の発生) |
72,000円 (損金算入) |
||
前払保険料 (資産の増加) |
84,000円 (資産計上) |
【保険料払込終了後(31年目以降)】
借方 |
貸方 |
||
生命保険料 (費用の発生) |
72,000円 (損金算入) |
前払保険料 (資産の減少) |
72,000円 |
給付金受取人が役員・従業員等の場合
給付金受取人が役員・従業員等の場合は、下記のようなパターンになります。
死亡給付金がある場合は、受取人が「遺族」になりますので注意しましょう。
契約形態 |
||
契約者 |
被保険者 |
給付金受取人 |
法人 |
役員・従業員 |
役員・従業員 |
【保険期間がタイプ3・4に該当する場合】
「小額の普通死亡給付がある終身保障タイプ」の医療保険ならば、その保険料を全額「福利厚生費」として扱いましょう。
【役員・従業員全員が被保険者の場合】
保険期間がタイプ1・2に該当する場合は、受取人が法人の場合と同じ経理処理になります。
その際、損金算入部分は「福利厚生費」として扱われます。
保険期間がタイプ3・4に該当する場合は、死亡保障部分の保険料は「給与」となります。
また医療保障部分の保険料は、受取人が法人の場合と同じ経理処理になります。
その際は「福利厚生費」として扱いましょう。
【役員・部課長等のみを被保険者とする場合】
特定の従業員のみを被保険者とする場合は、保険料の支払いのたびに全額が「給与」となります。
この場合は、医療保障部分と死亡保障部分に区別しなくても構いません。
【タイプ⑦】がん保険の経理処理について
給付金の受取人が法人の場合のがん保険をタイプ別に分ける
受取人が法人の場合のがん保険は、2つのタイプに分類されます。
タイプ |
保険期間 |
払込期間 |
税務 |
||
1 |
終身 |
終身 |
前半半分 |
1/2損金算入 1/2資産計上 |
|
後半半分 |
保険料全額損金算入し、更にそれまで資産計上した分を残りの期間で割り損金算入 |
||||
2 |
終身 |
一定期間 (有期) |
前半半分 |
期間中 |
A |
満了後 |
B |
||||
後半半分 |
期間中 |
C |
|||
満了後 |
D |
A~Dは下記を参考にしてください。
A |
期間を105歳までとし、期間按分した金額のうち1/2を損金算入、残金を資産計上 |
B |
期間を105歳までとし、期間按分した金額のうち1/2を、資産計上総額から切り崩して損金算入 |
C |
|
D |
期間を105歳までとし、期間按分した金額と、期間中に資産計上した額を105歳までの期間で割り損金算入 |
給付金の受取人が役員や従業員等の場合
給付金の受取人が役員や従業員等の場合は、受取人が法人の場合と同じ経理処理となります。
この時の損金算入部分は、「福利厚生費」として扱いましょう。
給付金受取人が法人で契約日が2012年4月27日より前ののがん保険をタイプ別に分ける
契約日が2012年4月27日以前のがん保険は、法改正前なので違う経理処理になります。
タイプ |
保険期間 |
払込期間 |
税務 |
|
1 |
終身 |
終身 |
損金算入 |
|
2 |
終身 |
一定期間 (有期) |
期間中 |
保険期間を105歳までとして、期間按分した金額は損金算入、残りは遺産計上します |
満了後 |
満了時の資産計上額を、105歳までの期間で割り損金算入します |
経理ではこう処理する!「がん保険」
保険料支払い時の仕訳について
下記の例で見てみましょう。
-
・契約年齢:45歳
-
・保険期間:終身
-
・保険料払込期間:終身
-
・年払保険料6万円を支払った場合
タイプ1の保険期間や保険料払込期間が終身の場合
【保険期間の前半半分の期間(30年間)】
借方 |
貸方 |
||
がん保険料 (費用の発生) |
30,000円 |
現金または預金 (資産の減少) |
60,000円 |
前払保険料 |
30,000円 |
【保険期間の後半半分の期間(30年間)】
借方 |
貸方 |
||
がん保険料 (費用の発生) |
90,000円 |
現金または預金 (資産の減少) |
60,000円 |
前払保険料 (資産の減少) |
30,000円 |
保険料支払い時の仕訳について
次は下記の数字の場合です。
-
・契約年齢:45歳
-
・保険期間:終身
-
・保険料払込期間:10年
-
・年払保険料15万を支払った場合
タイプ2の保険料払込期間が保険期間の前半1/2の期間より短い場合
【払込期間中(10年間)】
借方 |
貸方 |
||
がん保険料 (費用の発生) |
12,500円 (損金算入) |
現金または預金 (資産の減少) |
150,000円 |
前払保険料 (資産の増加) |
12,500円 (資産計上) |
||
前払保険料 (資産の増加) |
12,500円 (資産計上) |
【保険料払込期間満了から、保険期間の前半半分の期間経過まで(11年目以降の20年間)】
借方 |
貸方 |
||
がん保険料 (費用の発生) |
12,500円 (損金算入) |
現金または預金 (資産の減少) |
25,000円 |
前払保険料 |
12,500円 (資産計上) |
【保険期間の後半半分の期間(31年目以降の30年間)】
借方 |
貸方 |
||
がん保険料 (費用の発生) |
12,500円 (損金算入) |
現金または預金 (資産の減少) |
12,500円 |
前払保険料 (資産の減少) |
25,000円 |
保険料支払い時の仕訳について
次は下記の数字の場合です。
-
・契約年齢:25歳
-
・保険期間:終身
-
・保険料払込期間:70歳まで
-
・年払保険料48,000円を支払った場合
タイプ2の保険料払込期間が保険期間の前半1/2の期間より長い場合
【払込期間中でなおかつ保険期間の前半半分の期間(40年間)】
借方 |
貸方 |
||
がん保険料 (費用の発生) |
13,500円 (損金算入) |
現金または預金 (資産の減少) |
150,000円 |
前払保険料 (資産の増加) |
13,500円 (資産計上) |
||
前払保険料 (資産の増加) |
21,000円 (資産計上) |
【保険期間の前半半分経過から保険料払込期間満了まで(41年目以降5年間)】
借方 |
貸方 |
||
がん保険料 (費用の発生) |
40,500円 (損金算入) |
現金または預金 (資産の減少) |
48,000円 |
前払保険料 (資産の増加) |
21,000円 (資産計上) |
前払保険料 (資産の増加) |
13,500円 |
【満了後でなおかつ保険期間の後半半分の期間(46年目以降の35年間)】
借方 |
貸方 |
||
がん保険料 (費用の発生) |
40,500円 (損金算入) |
現金または預金 (資産の減少) |
13,500円 |
前払保険料 (費用の発生) |
27,000円 |
法人保険に加入するなら損金についてよく知っておこう!
経理処理は、保険の種類はもちろん、受取人や期間によっても大きく異なります。
特に資産計上なのか損金計上なのかをしっかりと見極め、適切な処理を行うようにしましょう。
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