法人向けの養老保険は大きく分けて4タイプ
そもそも養老保険ってどんな保険?
養老保険とは、満期前に死亡した場合には「死亡保険金」が、無事に満期を迎えれば「満期保険金」が支払われる、必ず保険金を受け取ることができる保険のことです。
今回はこの養老保険について、詳しくご紹介していきましょう。
そもそも養老保険とは?
養老保険の保険期間について
養老保険の保険期間には2つのタイプがあります。
-
・5円・10年・15年など年数で区切るもの
-
・55歳・60歳・65歳など満期を迎える歳で設定するもの
養老保険の解約返戻金について
養老保険は積立式の保険です。
満期直前でも、100%近い返戻率でお金を受け取ることができます。
養老保険は全額は受け取る事ができない?
「死亡保険金」や「満期保険金」など、必ず保険金が受け取れることが魅力の養老保険ですが、実際にその金額を全額手に入れることが可能だと思いますか?
この答えは次項でお答えしましょう。
養老保険の満期金には税金がかかる
「養老保険の保険金は全額受け取ることができるのか」
この答えはNOです。
全額受け取ることはできません。
その理由として、保険金は課税対象になり、税金が発生するため減額されてしまうからです。
保険料を払う人や受け取る人の組み合わせで変わる税金について
-
・保険料を払った人と満期金を受け取る人が同じ場合:所得税が発生
-
・保険料を払った人と満期金を受け取る人が違う場合:贈与税が発生
このようにどのような組み合わせであれ、必ず税金が発生するのです。
養老保険と所得税について
満期までに支払った保険料よりも、満期保険金として受け取る金額が大きければ所得税が発生します。
満期金を一度に受け取ると「一時所得」になりますし、分割して受け取ると「雑所得」として課税対象になります。
満期金を一度に受け取った場合の税金の計算方法について
満期金を一度に受け取った場合の税金の計算式は以下のようになります。
「満期金-支払った保険料の合計-50万円(一時所得の特別控除)」×1/2
養老保険に贈与税がかかる場合について
「契約者が夫で受取人が妻の場合」もしくは「契約者が親で受取人が子供の場合」などは贈与税が発生します。
保険期間5年未満もしくは契約後5年未満で解約した場合の養老保険の税金について
5年未満で解約した場合、下記の式で算出された金額が源泉分離課税として徴収されます。
(満期金-支払った保険料の合計)×20%
養老保険の経理処理について
上記でご紹介したように、養老保険では様々な税金が発生する可能性があるため、それぞれに対し適格な経理処理を必要とします。
この経理処理の仕方については、下記の記事で詳しく紹介されていますので、併せて参考にしてみましょう。
法人保険の経理処理をする上で知っておきた税務と損金について!
養老保険のタイプで損金計上の仕方が変わる
養老保険には4つのタイプがある
養老保険は4つのタイプに分類されます。
保険金受取人 |
保険料の法令・通達上の扱い |
||
死亡保険金 |
満期保険金 |
||
事業保証+退職金プラン |
法人 |
法人 |
全額資産計上 |
保険料肩代わりプラン |
被保険者の遺族 |
被保険者 |
全額損金算入 |
福利厚生プラン (ハーフタックスプラン) |
被保険者の遺族 |
法人 |
1/2損金算入(∵死亡保険金は遺族のため) 1/2資産計上(∵満期保険金は会社の資産) |
租税回避プラン (逆ハーフタックスプラン) |
法人 |
被保険者 |
明文なし(全額損金算入?) |
合理性がないと保険商品として認められない場合がある
養老保険は、「満期前に被保険者が死亡したらその遺族が死亡保険金を受け取れる」と共に、「無事に満期を迎えたら被保険者自身の老後の生活資金に充てる」ことを目的とした保険です。
そのため「死亡保険金の受取人と満期保険金の受取人が違う」契約をするのであれば、合理的な理由が必要な場合があります。
事業保障+退職金プランについて
社長や役員など、会社にとって大事な人材にかけるタイプです。
-
・満期前に死亡したら保険金で経営の安定を図る:事業保障
-
・無事に満期を迎えられたら:退職金
保険料肩代わりプランについて
会社が保険料を負担して、従業員の保障をするタイプです。
福利厚生の一環として利用されることが多いでしょう。
福利厚生プランについて
満期前に死亡したらその従業員の遺族に保険金が支払われ、無事に満期を迎えたら会社に保険金が支払われる保険です。
租税回避プランについて
租税回避プランは、「満期前に死亡したら遺族に、無事に満期を迎えられたら従業員に保険金が支払われる」などが考えられます。
このパターンでは、会社がその従業員のために保険料を支払う合理的な理由がないため、損金計上できない可能性があります。
【タイプ別】養老保険の計上処理の実務はどうするの?
会社が死亡保険金や満期保険金の両方を受け取れる場合について
「死亡保険金と満期保険金の両方を受け取る場合」は、「全て会社のため」として考えられます。
そのため保険料は全額が資産計上されることになります。
会社が死亡保険金や満期保険金のどちらかを受け取れる場合について
会社が「死亡保険金と満期保険金のどちらかを受け取る場合」は、「半分は会社のため」として考えられます。
そのため保険料の1/2が資産計上されることになります。
事業保障+退職金プランは保険料は損金算入ができない
「会社が死亡保険金や満期保険金の両方を受け取れる場合(事業保障+退職金プラン)」は、保険料全額が資産計上されることになります。
そのため保険料は損金計上できません。
保険料肩代わりプランは保険料を全額損金算入する事ができる
「保険料肩代わりプラン」は、福利厚生を目的として会社が保険料を肩代わりするものです。
そのため会社が保険料を支払っている=損金になりますので、「福利厚生費」もしくは「給与」として損金計上することができます。
福利厚生プランは保険料の1/2が損金算入する事ができる
「福利厚生プラン」は、満期前に死亡したら遺族に、無事に満期を迎えられたら会社に保険金が支払われることになります。
そのため1/2は資産計上・残りの1/2は損金計上することが可能です。
-
・満期保険金の積立:資産計上
-
・死亡保険金:福利厚生費として損金計上
租税回避プランや逆ハーフタックスプランの保険料は全額損金算入する事はあやしい
繰り返しになりますが、「租税回避プラン」は合理性に欠く契約です。
そのため全額どころか1/2すら損金計上できるかどうかも難しいといえるでしょう。
法人が契約する意味のあるのはこの2タイプ
法人が加入する意味のある2タイプとは?
法人で加入する意味があるのは下記の2タイプです。
-
事業保障+退職金プラン
死亡保険金受取人:法人、満期保険金受取人:法人
-
福利厚生プラン
死亡保険金受取人:被保者の遺族、満期保険金受取人:法人
保険金受取人 |
||
死亡保険金 |
満期保険金 |
|
法人 |
法人 |
事業保証+退職金プラン |
被保険者の遺族 |
被保険者 |
(存在意義なし) |
被保険者の遺族 |
法人 |
福利厚生プラン |
法人 |
被保険者 |
(税法上根拠なし・否認リスクあり) |
福利厚生プランのメリットについて
福利厚生プランの何よりのメリットは、まず保険料の1/2が損金計上できるという点です。
そのため課税対象額を減らし法人税の節税をすることができます。
他にも満期保険金で退職金の準備をすることを含め、解約時に貰える解約返戻金などで、将来かかりうるお金のための資金形成をすることも可能です。
また資金形成のひとつとして、解約返戻金を担保にし、その解約返戻金の7割~9割の額が借り入れできる契約者貸付制度も、予備準備金として活用できますので覚えておきましょう。
ちなみに解約返戻金をそのまま受け取ると課税対象になってしまうのですが、遺族が死亡保険金を受け取れば相続税の非課税枠があります。
このような制度を上手に利用し、なるべく課税対象にならない受け取り方を心掛けましょう。
福利厚生プランのデメリットについて
福利厚生プランのデメリットとして1番に考えられるのは、保険料額の設定次第では会社の資金力を圧迫する可能性があることです。
当然ながら保障を受けるためには保険料を払う必要があります。
節税効果があるとはいえ、保険料を払うその時には現金がなくなるということを覚えておきましょう。
また福利厚生として使うからには、従業員全員、もしくは最低でも7割程度の従業員を対象にせねばなりません。
そのため離職率が高い会社には向かないプランだと言えるでしょう。
事業保障+退職金プランのデメリットについて
事業保障+退職金プランのデメリットは、意外と実益が乏しいことです。
例えば保険料が高額なことが多いため、「福利厚生プランのデメリット」同様会社の資金力を圧迫する可能性があります。
またその保険料は損金計上ではなく資産計上になるので、節税効果はありません。
他にも退職金支給による「多額のお金がなくなる」リスクを、返戻率の低い解約返戻金だけではカバーできない可能性もあるのです。
養老保険の普遍的加入って何?
養老保険の普遍的加入とは?
養老保険は基本的に全員加入が条件です。
しかし合理性のある基準で選別されたのであれば、普遍的加入も可能です。
ただし、選別したとしても7割~8割の従業員をカバーする必要があります。
また「勤続年数」等で選別するのは問題ありませんが、「役職」や「性別」で選別することは非合理的だとみなされる可能性が高くなるでしょう。
養老保険福利厚生プランでの注意点
福利厚生で行っていることを証明する事ができないと否認される場合がある?
「福利厚生プラン」で保険料の1/2が損金計上できるのは、「福利厚生に利用されるからこそ」です。
そのため福利厚生で行っていることを証明できなければ、この処理を否認される可能性があります。
福利厚生規定を整備しておこう!
福利厚生で利用しているという確実な証拠として、「福利厚生規定」を作成しておきましょう。
これを明確に規定しておくことで、損金計上できないリスクを回避することができます。
法人の節税による裏ワザとそのリスクについて
養老保険の保険料を給与とみなして社会保険料の削減を行う
-
・契約者=法人
-
・被保険者=役員・従業員
-
・保険金受取人=法人の契約形態
この場合は、支払い保険料・前払い保険料・積立保険料などの項目で保険料が処理されます。
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・契約者=法人
-
・被保険者=役員・従業員
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・保険金受取人=役員・従業員の遺族の契約形態
この場合は、支払った保険料は「給与」とみなされます。
「給与」として支給すれば損金計上できますが、個人に所得税・住民税が課税されてしまいます。
しかし、ある条件を満たせば「社会保険料」を抑えることが可能です。
-
・保険種類=養老保険
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・契約者=法人
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・被保険者=役員・従業員
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・満期保険金受取人=被保険者(役員・従業員)
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・死亡保険金受取人=役員・従業員の遺族
この契約形態の場合は、保険料は「給与」となり、所得税・住民税は掛かりますが、社会保険料の計算対象にはなりません。
よって、この手法では「社会保険料」の節約になります。
この裏ワザのリスクとは?
この方法での社会保険料の節税は「旧社保庁の行政通達(昭和38年2月6日)」に以下のように記載されています。
団体養老保険の保険料を事業主が負担している場合、その保険契約によって受ける利益が従業員に及ぶものであっても、当該保険に関する事項について労働協約、給与規則等に一切規定されておらず、事業主が保険契約の当事者となって恩恵的に加入しているような場合には、その事業主が負担する保険料は、報酬には含まれない。
この根拠法そのものが昭和38年の通達ですので、今後変更になる可能性もあります。
また現在でも保険事務所によっては否認される可能性があります。
この方法を逓増定期保険で行う会社もあるようですが、基本的には養老保険での活用でなければ承認されないリスクがあることを覚えておきましょう。
養老保険のおすすめの保険会社を紹介!
養老保険を扱う保険会社としては「かんぽ生命契約」などが有名ですが、他にもおすすめの保険会社はたくさんあります。
下記の記事ではそれらの保険会社の選び方やそのポイントを紹介してくれていますので、商品選びの参考として一読してみましょう。
法人保険を種類別で比較ランキング!選び方や見ておきたいポイントも解説!
加入を検討する時は必ず商品を比較して会社に合ったものを!
養老保険は人気の法人保険であるため、数多くの保険会社で商品展開されています。
複数の商品を比較検討し、自社に合った保険を選ぶようにしましょう。
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