減資による節税のメリットやデメリットとは?
減資とは?
減資とは、会社が資本金の額を減少させることです。
今回はこの減資について、その仕組みややり方をご紹介していきましょう。
減資には2種類ある
有償減資とは?
有償減資の場合は「みなし配当」の額がいくらなのかが重要になります。
計算手順は下記の順番で求めることができます。
-
資本剰余金からの配当による払戻しのうち、資本金等の額に対応する分の金額を計算
-
減少した利益積立金額の計算を行う
この減少した利益積立金額が、株主にとっての「みなし配当」となります。
無償減資とは?
株式併合によって無償減資を行う場合、減少する志保金額を確認してみましょう。
株式併合により減少する資本金の額は、以下の算式で計算することになります。
均等割額とは?
均等割額とは、法人道府県民税や法人市町村民税の税金で、赤字であっても一律に各企業が負担しなければならない税金のことです。
この均等割額は「会計上の資本金」ではなく「税務上の資本等の額」によって決まるので注意が必要です。
無償減資について
資本金・資本準備金・資本金の額・資本金等の額について
資本金とは、会社に対して株主が払い込んだ金額です。
増資の際には、全体の金額の1/2を超えない額を「資本金」ではなく「資本準備金」として積み立てておくことができます。
資本金は少ない方が税務上有利となるため、通常は限度額である1/2を資本準備金とします。
資本金の額や資本金等の額が減少する減資は欠損てん補によるもの
欠損てん補とは、過去の累積損失であるマイナスの繰越利益剰余金に、減資によって発生したその他資本剰余金を充当することです。
無償減資の仕訳について
資本金を減少させその他資本剰余金を増加させる場合
-
・資本金1,000万円を減額し、同額を「その他資本剰余金」とした場合
借方 |
貸方 |
||
資 本 金 |
1,000 |
その他資本剰余金 |
1,000 |
資本金の減少を欠損補填に充当する場合
-
・資本金1,000万円を減額し、発生した「その他資本剰余金」を欠損填補に充当する場合
借方 |
貸方 |
||
資 本 金 |
1,000 |
その他資本剰余金 |
1,000 |
その他資本剰余金 |
1,000 |
繰越利益剰余金 |
1,000 |
無償減資の手続はどうするの?
無償減資の手続きは下記の順番で行う必要があります。
-
株主総会の特別決議
-
債権者の保護手続き(官報公告、催告)
-
減資効力発生日
-
変更登記
欠損填補に充当できる金額について
臨時株主総会で欠損てん補を決議する場合
-
・直近の定時株主総会で承認された貸借対照表上の利益剰余金のマイナスが上限
定時株主総会で欠損てん補を決議する場合
-
・同じ定時株主総会で承認された貸借対照表上の利益剰余金のマイナスが上限
外形標準課税の計算への影響はある?
外形標準課税計算への影響は2つ考えられます。
外形標準課税の判定への影響
外形標準課税の対象は、事業年度終了の日現在における資本金の額又は出資金の額が1億円を超える法人です。
欠損てん補する減資で、期中に資本金のを1億円以下とすれば、外形標準課税の対象外となります。
外形標準課税の課税額への影響
外形標準課税の課税額は、「資本金等の額」に以下の税率が課税されます。
平成28年4月1日から平成29年3月31日までに開始する事業年度 |
平成27年4月1日から平成28年3月31日までに開始する事業年度 |
平成27年3月31日以前に開始する事業年度 |
|
税率 |
0.525% |
0.315% |
0.21% |
住民税均等割の計算への影響について
住民税均等割の計算は、都道府県により異なります。
東京都の場合は、都民税均等割の料率をご覧下さい。
資本割に比べれば小さいですが、影響はあります。
投資家目線で投資した会社の減資について
無償減資は、貸借対照表上の科目間の数字を組み替えるだけで、会社財産に動きはありません。
ですので投資家にとっては実質的な影響はありません。
無償減資を行う目的とは?
資本金を減らすことにより納税額を減らす事ができる
無償減資により「資本金の額」や「資本金等の額」を減らすと、節税ができる場合があります。
特に事業税の外形標準の資本割は資本金等の金額に応じて大きくなりますので、資本金等の金額が大きな会社にとってはその効果が高くなるでしょう。
資本金が5億円以上になった時、会計監査人の設置を避けるため
前事業年度の末の資本金が5億円以上になると、会社法で会計監査人の設置が義務付けられます。
期中の増資で資本金が5億円以上となり、事業年度末まで減資手続きが完了しないと、その翌年には会計監査人設置会社となりますので注意しましょう。
事業再生をするため
下記の減資をするメリットにより、事業再生を行う会社で減資が行われる場合があります。
-
再生後に利益が出たあとに配当をしやすくする
-
貸借対照表の改善を行える
減資を利用した節税対策について
資本金を減らす方法について
資本金が増加していくと税金も増えていくことがあります。
資本金の場合、大事なラインは1,000万円、3,000万円、1億円です。
資本金1,000万円未満の場合について
資本金1,000万円未満のメリット
-
・会社設立後の約2事業年度、消費税が免税となる
資本金1,000万円以下の場合について
資本金1,000万円以下のメリット
-
・法人住民税均等割額が毎年約11万円減少する
資本金3,000万円以下の場合について
資本金3,000万円以下のメリット
-
・「中小企業者等が機械等を取得した場合等の特別控除」の適用がある
資本金1億円超や以上、以下の場合について
資本金1億円以下の場合、多くの特典があります。
法人税の特典
-
法人税の計算上、軽減税率が適用
-
交際費等の損金不算入
-
少額減価償却資産(上限年間300万円)
-
特定同族会社の留保金課税
-
欠損金の繰戻還付制度
地方税の特典
-
法人事業税の外形標準課税
-
法人道府県民税及び法人市町村民税の均等割税金
税務調査の特典
-
国税局管轄から税務署管轄に変更
減資のメリットとデメリットについて
減資のメリット
減資のメリットは2つです。
-
累積赤字の補てん
-
節税
減資のデメリットとは?
減資のデメリットは2つです。
-
一株式あたりの価値は変わらなくても信用力は低下してしまう
-
株主への説明が大変
税務メリットを得た上で信用力低下というデメリットを防ぐ方法はある?
会社ホームページや会社案内等で、資本金と資本準備金の合計金額を開示している資本金1億円超の会社の場合は、資本金を1億円以下まで無償減資して資本準備金に振り替えることにより、信用力の低下リスクを低くおさえつつ、税務メリットを享受できます。
減資に関わる税務について
みなし配当の金額計算方法
例えば簿価純資産金額2億5千万円、資本金1億円の株式会社が、株主に9千万円の金銭払戻しを行ったとしましょう。
この場合の「みなし配当」の計算は以下のようになります。
-
・9千万円ー1億円×(9千万円/2億5千万円)
つまり5,400万円です。
みなし配当に係る手続きとは?
みなし配当金額に相当する法人税上の利益積立金が減少するという処理を、法人税申告書で行う必要があります。
なぜみなし配当なのか?
みなし配当は、実質的に利益剰余金の配当と変わりません。
そのため法人税法上配当に準ずるものとして、配当受取側にて受取配当等の益金不参入の規定を適用するためです。
減資した企業の事例について
シャープが行った減資について
シャープは2015年5月に、1,200億円の資本金を1億円に減資しようとしました。
しかしマスコミや世間、政府からばかりでなく、株式市場からもNOが続出して、結局この1億円の話は流れて減資は5億円に落ち着きました。
1億円になれば中小企業になりますので、大企業時代には不可能だった節税ができたわけですが、もう1つの減資のメリット「累積赤字の相殺」のみで諦めることになったのです。
減資をする場合はデメリットを確認しておこう!
減資をすれば、その分会社を小さく見せられますので、節税効果も大きなものになります。
しかしそれに伴うデメリットも多いのも事実です。
減資を行うのであれば、このメリットとデメリットをしっかりと把握してから行うようにしましょう。
関連する記事
この記事が気に入ったらいいね!しよう
マネストの最新エントリーが見られます。
Twitterでマネストをフォローしよう! @ManeSto_comさんをフォロー