老齢基礎年金vs国民年金 2つの違いや受給資格について
老齢基礎年金とは何?
「老齢基礎年金」とは、原則20歳以上~60歳未満の間の支払保険料に応じて、65歳から受取れる年金のことです。みなさんは老齢基礎年金より「国民年金」の方がなじみがあるのではないでしょうか?
これから「老齢基礎年金」と「国民年金」の内容や違いを中心に解説します。
国民年金と老齢基礎年金の違いとは?
国民年金とは?
国民年金とは、国民の生活の最低限の保障を行うための年金制度です。
具体的には、老齢・障がい・死亡のときに基礎年金が給付されます。原則、日本に住んでいる20歳以上60歳未満の人は全員加入する必要があります。
国民年金の主な種類
加入者の状態 |
支給年金 |
老齢の場合 |
老齢基礎年金 |
障がいがある場合 |
障害基礎年金 |
死亡した場合 |
遺族基礎年金 |
基礎年金とは?
基礎年金とは、さきほどの「老齢基礎年金」、「障害基礎年金」、「遺族基礎年金」の総称です。また、日本に住む人であれば誰でも共通に支給される生活基礎資金という意味でも基礎年金と言われます。
国民年金は年金制度で基礎年金は給付である
国民年金と基礎年金は同じような意味で利用される場面もあると思いますが、国民年金は日本に住む一定の年齢の人が全員加入をする年金制度のことです。基礎年金は、国民年金制度から支給される給付のことです。
国民年金の給付は基礎年金だけじゃない?
国民年金の給付は、老齢基礎年金、障害基礎年金、遺族基礎年金以外にも下記のものがあります。このように「国民年金=基礎年金」ではなく、「国民年金≠基礎年金」なのです。
その他の国民年金の給付
年金の種類 |
詳細 |
寡婦年金 |
国民年金保険料の納付済期間と、免除期間を合わせて25年以上ある夫が、年金を貰わずに死亡したとき、妻に給付される年金 |
死亡一時金 |
国民年金保険料を3年以上納めた人が、老齢基礎年金・障害基礎年金の両方とも貰わないまま死んでしまったときに、生計をともにしていた遺族へ給付される年金 |
脱退一時金 |
短期間日本に滞在した外国人が、納めた国民年金保険料を返還してもらうために貰う一時金 |
老齢基礎年金はいくらもらえるの?~繰り上げ受給と繰り下げ受給~
老齢基礎年金の受給資格について
老齢基礎年金の受給資格についてまとめました。
老齢基礎年金の受給資格
受給開始年齢 |
原則65歳(繰り上げ受給、繰り下げ受給が可能) |
受給資格期間 |
・平成29年4月以降 20歳から60歳までの間に保険料を10年間収めること ・平成29年3月以前 20歳から60歳までの間に保険料を25年間収めること |
平成29年4月以降は、制度変更により保険料納付期間が10年間でも年金が受給できるようになりました。この「10年間」ですが、保険料を免除された期間や合算対象期間(カラ期間)も資格期間としてカウントされるので、より老齢基礎年金が受給しやすくなっています。
合算対象期間(カラ期間)は多くの条件がありますので、代表的なものを下記に挙げました。カラ期間は資格期間にはカウントされますが、年金額の計算には反映されませんので注意が必要です。
合算対象期間(カラ期間)
-
昭和61年3月までの間にサラリーマンの妻(または夫)であり、国民年金に任意加入しなかった期間
-
海外に居住していた期間のうち国民年金に任意加入しなかった期間
-
平成3年3月までの学生で、国民年金に任意加入しなかった期間
-
昭和36年以降の厚生年金保険加入期間のうち、20歳未満の期間または60歳以上の期間
老齢基礎年金は満額いくら貰える?
老齢基礎年金は40年間保険料を支払うと満額が貰えます。満額金額はその年その年の物価などによって変動します。
平成29年度は下記の計算式で求められます。平成29年度の満額は、779,300円です。
国民年金受給額計算式(平成29年度)
-
779,300円 × 加入期間(保険料納付月数) / 480
保険料納付年数別の国民年金受給額(平成29年度)
保険料納付年数 |
国民年金年間受給額 |
10年 |
194,825円 |
20年 |
389,650円 |
30年 |
584,475円 |
40年 |
779,300円 |
老齢基礎年金の繰り上げ受給とは
老齢基礎年金の受給開始は原則65歳からですが、希望すれば受給開始を繰り上げる「繰り上げ受給」が可能です。ただし、1カ月受給開始月を早めるごとに貰える金額が0.5%減額されてしまいます。一度減らされた減額率は元に戻りませんので、繰り上げ受給は注意が必要です。
繰り上げ受給した場合の年間老齢基礎年金額(平成29年度) ※保険料40年振込の場合
受給開始年齢 |
年間老齢基礎年金額 |
60歳(60カ月繰り上げ) |
545,510円(-30%) |
61歳(48カ月繰り上げ) |
592,268円(-24%) |
62歳(36カ月繰り上げ) |
639,026円(-18%) |
63歳(24カ月繰り上げ) |
685,784円(-12%) |
64歳(12カ月繰り上げ) |
732,542円(- 6%) |
65歳 |
779,300円(± 0%) |
老齢基礎年金の繰り下げ受給とは
繰り上げ受給とは逆に、老齢基礎年金の受給開始を65歳より遅らせることを「繰り下げ受給」と言います。1カ月受給開始月を遅らせるごとに貰える金額が0.7%増額されます。ただし、繰り下げ受給は最大で70歳までです。
繰り下げ受給した場合の年間老齢基礎年金額(平成29年度) ※保険料40年振込の場合
受給開始年齢 |
年間老齢基礎年金額 |
65歳 |
779,300円(± 0%) |
66歳(12カ月繰り下げ) |
833,851円(+ 7%) |
67歳(24カ月繰り下げ) |
888,402円(+14%) |
68歳(36カ月繰り下げ) |
942,953円(+21%) |
69歳(48カ月繰り下げ) |
997,504円(+28%) |
70歳(60カ月繰り下げ) |
1,052,055円(+35%) |
繰り上げ受給をした方が年間受給額はアップしますが、年金受給総額は何歳まで受給すれば繰り上げ受給が有利なのでしょうか?
通常の65歳受給と繰り上げ受給をした年齢別で確認しました。
繰り下げ受給した場合の年金受給総額損益分岐点
受給開始年齢 |
繰り上げ受給が通常受給を上回る年齢 |
66歳(12カ月繰り下げ) |
80歳 |
67歳(24カ月繰り下げ) |
81歳 |
68歳(36カ月繰り下げ) |
82歳 |
69歳(48カ月繰り下げ) |
83歳 |
70歳(60カ月繰り下げ) |
84歳 |
老後に貯金があり、長生きする自信がある方は繰り下げ受給をするとお得です。
老齢厚生年金について~老齢基礎年金との違いは?~
老齢厚生年金とは?
「老齢厚生年金」は厚生年金に加入していた会社員や公務員の方が対象です。老齢厚生年金は、原則65歳から受給可能で老齢基礎年金に上乗せして受給できます。
老齢厚生年金の受給資格について
老齢厚生年金は、国民年金の10年間の保険料納付期間(平成29年3月までは25年間)があれば、厚生年金保険料納付期間が1カ月でも、老齢厚生年金の受給対象です。また、厚生年金保険料は半分は会社が支払ってくれますので、とても優遇された制度だと言えます。
老齢厚生年金の特別支給とは?
老齢厚生年金の受給開始年齢は原則65歳ですが、一定の年齢の方は65歳になるまでに「老齢厚生年金の特別支給」が受けられます。生年月日が昭和24年4月2日~昭和28年4月1日生まれの方は特別支給が受けられますが、昭和36年4月2日生まれ(女性は、昭和41年4月2日生まれ)以降の方は特別支給が受けられません。
より詳しく確認されたい方は 日本年金機構のページを参考にしてください。
所得制限の在職老齢年金制度とは?
老齢厚生年金は通常65歳(繰り上げ受給をすれば60歳)から受給できます。
ただし、最近は定年延長などもあり、60歳以降も働いて厚生年金保険料を払う人が増えてきています。厚生年金は70歳未満まで加入可能です。そのような方は会社から給料を得ていますので、老後の生活資金である年金は制限を受けて減額されます。その制度のことを「在職老齢年金制度」と言います。60歳以降も働く場合は、働いて年金も受給した方がいいのか、年金だけを受給した方がいいのかを一度検討されることをおすすめします。
詳しくは、日本年金機構のページを参考にしてください。
老齢厚生年金はいくらもらえる?受給額の計算方法
老齢厚生年金額を計算する方法
老齢基礎年金の受給額の計算式は、加入期間のみが分かれば計算できました。では、老齢厚生年金の受給額の計算式を見てみましょう。
老齢厚生年金の受給額(簡易式)
-
平均給与 × 一定乗率 × 加入期間
老齢厚生年金の計算式の変数には、「加入期間」に加えて「加入期間中の平均給与」が必要です。加入期間は、会社員の期間で計算できます。
では、加入期間中の平均給与はどのように確認すればいいのでしょうか?なかなか、会社員時代の全ての給与を覚えていたり、記録している人もいないと思います。給与を現在価値に置き換える作業も必要になります。正確な金額については、年金事務所などで確認するしかありません。
また、老齢厚生年金の受給額は、平成15年4月前後で計算式が大きく変更になっています。
老齢厚生年金受給額平均給与定義
-
平成15年3月以前:月給のみの平均値 × 7.5 / 1000 × 加入期間(月数)
-
平成15年4月以降:( 月給 + ボーナスの平均値 ) × 5.769 / 1000 × 加入期間(月数)
平成15年4月以降に行われた制度変更を「総報酬制の導入」と言います。総報酬ということで、ボーナスも給与の計算式に盛り込まれました。月収が低くて、ボーナスが高い人の平均給与が上がったというわけです。
ボーナスも加味するため、平均給与が上がったからといっても厚生年金の受給額が増えたわけではありません。計算式の後に付いている「7.5」や「5769」という乗率によって調整が行われています。
総報酬制の導入による老齢厚生年金の受給額の変化がどれくらいあるのかモデルケースで見てみましょう。
老齢厚生年金受給額試算(老齢厚生年金加入期間40年)
月収 |
ボーナス1回 |
年収 |
平成15年3月以前 |
平成15年4月以降 |
30万円 |
0円 |
360万円 |
108万円 |
83万円 |
60万円 |
480万円 |
108万円 |
111万円 |
|
40万円 |
0円 |
480万円 |
144万円 |
111万円 |
60万円 |
600万円 |
144万円 |
138万円 |
※ボーナスは年2回として計算
将来のために年金について知っておこう!
国民年金、老齢基礎年金、老齢厚生年金を中心に解説しました。「将来の年金が不安」ということはよくニュースになっていますが、このように年金の中身を見ていくと、さまざまな制度があることが理解していただけたのではないでしょうか?
年金が不安だからといって、現役時代に必要以上に老後資金を貯めてしまうと、今の生活がつまらないものになってしまいます。将来と現在の生活を楽しくするために、まずは年金について詳しく勉強してみてはいかがでしょうか?
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