夫を亡くした妻が受け取れる寡婦年金について詳しく解説!
寡婦年金(かふねんきん)とは?
寡婦年金という制度をご存じでしょうか?聞いたことがないという方も多いのではないでしょうか?
寡婦年金とは、国民年金(厚生年金や共済年金も同様)に加入している夫が死亡した場合に、条件を満たして入れる妻に対してお金が支給されるものです。
それでは、寡婦年金の詳細と、他の遺族給付制度との比較をしていきましょう。
寡婦年金とは?~しくみ・受給要件・特徴~
寡婦年金を貰う条件は?
寡婦年金を貰う条件は、以下の5つの条件をすべて満たしたときに貰えます。
寡婦年金を貰う条件
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国民年金を納付した期間と免除期間を合わせてが25年以上ある夫が、国民年金を貰わずに死亡したとき。
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死亡した夫に障害基礎年金の受給歴がないこと。
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死亡した夫が老齢基礎年金の支給を受けていないこと。
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夫が死亡したときに夫と生計を共にし、結婚して10年以上たち、妻が65歳未満であること。
また、けっこしていなくても事実婚であれば認められます。 -
夫が死亡したときに妻が自分の老齢基礎年金の繰り上げ受給をしていないこと。
寡婦年金は誰が受け取れるのか?
国民年金に加入している死亡した夫と生計を共にしていた妻が受け取れます。逆に、妻が死亡した場合は、夫は寡婦年金は受け取れません。また、妻が寡婦年金を受け取っている途中に、再婚した場合は支給が停止されます。
寡婦年金の金額はいくら貰えるの?
寡婦年金は、妻が60~65歳になるまでの5年間支給されます。寡婦年金の支給金額は、死亡した夫が受取る予定だった老齢基礎年金の75%の金額です。
遺族基礎年金・死亡一時金・寡婦年金は併給出来ない?
夫が死亡した時の公的保障として寡婦年金以外に、「遺族基礎年金」と「死亡一時金」があります。これらの3つの公的保障は1つしか受けることができません。
公的遺族保障を下記にまとめました。
公的遺族保障一覧表
公的保障 |
受給できる人 |
寡婦年金 |
子どものいない65歳未満の妻(結婚期間10年以上) |
遺族基礎年金 |
子どものいる妻とその子 |
死亡一時金 |
寡婦年金と遺族基礎年金の受給条件に当てはまらない妻 |
遺族基礎年金、死亡一時金、寡婦年金の関係について
寡婦年金と遺族基礎年金・死亡一時金との関係を見てみましょう。
◎寡婦年金と遺族基礎年金
寡婦年金と遺族基礎年金を受給できるときは、どちらかを選択します。
ただし、遺族基礎年金の方が金額が多いため、遺族年金を選びます。
◎寡婦年金と死亡一時金
寡婦年金と死亡一時金は、どちらが金額が多いかはそのときにならないとわかりません。そのときに、有利な方を選択しましょう。
遺族厚生年金と寡婦年金について
厚生年金に加入している夫が死亡した場合は、妻は厚生年金の寡婦年金は受給できません。その代りに「中高齢寡婦加算」があります。
中高齢寡婦加算とは、遺族厚生年金の受給条件に該当する40~65歳の妻に、18歳未満の子どもがいない場合にお金が支給されます。逆の場合の夫は受給できません。
妻が60歳になると、中高齢寡婦加算は終了し、国民年金部分を寡婦年金か遺族厚生年金のどちらにするかを選択します。遺族基礎年金の方が金額が多いため、遺族年金を選びます。
寡婦年金は課税?非課税?
寡婦年金は、金額に関わらず全額非課税です。
寡婦年金は65歳以上はどうなる?
妻が寡婦年金を受給している場合は、65歳になると支給が終了します。
また、妻が65歳以上の時に、夫が死亡した場合は寡婦年金は支給されません。
妻を亡くした夫の場合は?寡夫年金はある?
寡夫ってなに?
寡婦という言葉がありますので、寡夫という言葉もあります。
寡夫とは、妻と死別または離婚して、再婚しない男性のことです。
寡夫年金って無いの?
残念ながら、寡夫年金というものはありません。
寡婦年金と死亡一時金どちらが多いの?
受け取れる金額だけ見ると寡婦年金が多い?
さきほど、「寡婦年金と死亡一時金は、どちらが金額が多いかはそのときにならないとわかりません」と説明しました。ここでは、寡婦年金と死亡一時金のどちらの金額が多いのかを詳しく見ていきましょう。
それぞれの受給額
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寡婦年金:死亡した夫が受け取る予定だった老齢基礎年金額の4分の3を5年間受給できる
老齢基礎年金額が78万円だった場合は、78万円 × ¾ × 5年間 = 約290万円 -
死亡一時金:最大で32万円
受給額だけを見ると寡婦年金を選ぶ事になりそうです。ただし、そうはならない場合があります。寡婦年金の方が、受給条件が厳しいため死亡一時金しか選択できない場合があります。次ではその内容を確認しましょう。
妻が年金を繰上げ受給していると変わる
死亡一時金になくて、寡婦年金のみにある受給条件は、妻が老齢基礎年金を繰り上げ受給していないことです。
老齢基礎年金は、通常は65歳以降に受け取りますが、繰り上げ受給の申請をすると、年金額は下がりますが、60歳から年金を受け取ることができます。寡婦年金は、60~65歳になるまでに受給する制度ですので、老齢基礎年金と寡婦年金の両方受け取ることはできないということです。
基本的には、寡婦年金の方が死亡一時金より有利ですが、下記のような場合は死亡一時金を受け取る方がいい場合もあります。
死亡一時金の方が有利な場合
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老齢基礎年金繰り上げ受給額(最大5年) + 死亡一時金 > 寡婦年金(最大5年)
妻自身が老齢厚生年金を受け取れる場合は?
妻が会社員の過去があり、厚生年金に加入していたことがある場合は、60歳から老齢厚生年金を受け取ることができます。その場合で、寡婦年金が受け取れる条件で夫が死亡した場合は、「自分自身の老齢厚生年金」と「寡婦年金」のどちらかを選択することになります。
この場合もどちらの金額が高いのかを計算して、お得な方を選ぶようにしましょう。
自分自身の老齢厚生年金の方が有利な場合
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自分自身の老齢厚生年金 + 死亡一時金 > 寡婦年金
会社員であった夫が死亡した場合は?
会社員の夫が死亡した場合は、妻は遺族厚生年金を受け取る権利を取得します。妻は以下のどちらかを選択します。
会社員の夫が死亡した場合の妻の選択肢
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遺族厚生年金 + 死亡一時金
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寡婦年金
一般的には遺族厚生年金の方が寡婦年金より金額が多い場合が多いので、「遺族厚生年金と死亡一時金を受け取る」を選択することをおすすめします。
寡婦年金を貰う場合は条件を良く確認しよう!
寡婦年金を知らなかったという人にとっては、お得な情報が手に入ったのではないでしょうか?寡婦年金だけでなく、遺族年金や死亡一時金などあまり知られていない公的遺族保障の制度も理解していただけたと思います。
自分の条件はもちろんのこと、夫がどの年金制度に加入し、どのような状態になっているのかを把握しておかないと、寡婦年金が一番正しい選択肢かどうかがわかりません。
いざというときに一から調べると大変ですので、これを読んだことをきっかけに、遺族保障の選択肢の整理をしてみるのはいかがでしょうか?
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