確定給付年金(DB)と確定拠出年金(DC)の違いは?
確定給付企業年金法(DB制度)とは?
確定給付企業年金法(DB制度)とは、企業年金制度のことです。
その種類は下記の2つに分類されます。
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規約型企業年金
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基金型企業年金
今回はこの2つの違いについて、詳しくご紹介していきましょう。
確定給付企業年金(DB)の特徴と仕組みについて
確定給付企業年金の特徴は?
確定給付企業年金の特徴は4つです。
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設立に必要な加入者数は、基金型で原則300人以上、規約型は人数要件はありません
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掛金は原則として事業主負担ですが、本人の同意があれば、2分の1を上回らない範囲で本人に負担させることも可能です
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年金給付は、原則として終身または5年以上の有期年金とされています
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毎年、積立金が責任準備金額(継続基準)、最低積立基準額(非継続基準)を上回るかを計算し、不十分な場合は法令の定めによって掛金を見直す必要があります
確定給付企業年金の仕組みについて
確定給付企業年金の仕組みは下記のようになります。
規約型と基金型の2つのタイプがある
規約型:生命保険会社・信託銀行が管理し、運用・給付を担う
基金型:企業年金基金が管理し、運用・給付を担う
DB制度の資産運用について
DB制度は確定給付型の企業年金であり、資産運用は企業年金側で行われます。
規約型DBでは会社が、基金型DBでは企業年金基金が運用の方針を決定し、運用の委託を行います。
労働組合の関わりについて
DB制度については規約型、基金型それぞれについて労働組合の関わり方が異なります。
規約型DBは、理事会や代議員は置く必要がないため、会社が制度運営のすべてを一存により進める場合がほとんどです。
基金型DBは、独立した法人格を持つ企業年金基金の制度運営に、労働者代表が直接的に係る仕組みがあります。
転職・退職した時の確定給付企業年金はどうなるのか?
退職時に「脱退一時金」を選択しなかった場合は、年金原資は企業年金連合会に移換されます。
しかし転職先の企業年金が受け入れ可能であれば、そのままその年金に移換することができます。
確定給付企業年金の掛金について
現在のDBにおける掛金は、標準掛金をベースとしています。
そのため積立不足があれば補足掛金(特別掛金、特例掛金)で対応するという仕組みになっているのです。
積立不足がない状況では、事前積立を目的とした掛金拠出は認められていません。
確定給付企業年金のメリットとデメリット
加入者の確定給付企業年金のメリットとは?
加入者の確定給付企業年金のメリットは5つです。
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事業主の負担で上乗せ年金がもらえる
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資産運用を自分で行う必要がない
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老後の生活設計がしやすい
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一時金として受け取ることもできる
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受給権を保護する仕組みがある
事業主の確定給付企業年金のメリットとは?
事業主の確定給付企業年金のメリットは4つあります。
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企業の魅力を高める
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勤続年数や退職理由に応じた給付額の設計ができる
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掛金拠出時は全額損金算入できる
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運用時に税制優遇がある
加入者の確定給付企業年金のデメリットとは?
加入者の確定給付企業年金のデメリットは3つ考えられます。
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約束された給付が引き下げられるリスクがある
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短期間での転職は不利になりやすい
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自己都合退職の場合給付が不利になる可能性がある
事業主の確定給付企業年金のデメリットとは?
事業主の確定給付企業年金のデメリットは4つです。
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掛金の拠出を負担する必要がある
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管理・運用の負担を負う必要がある
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資産運用の結果によっては積立不足の可能性がある
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退職給付会計により債務認識が必要になる
確定給付企業年金と確定拠出年金との違い
確定給付企業年金と確定拠出年金の違いを比較
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確定給付企業年金 |
確定拠出年金 |
特徴 |
「給付額」を先に決定する |
「拠出額」を先に決定する |
運用の流れ |
将来の給付額を確定 ↓ 年金資産を一括して運用・管理 ↓ 決まった額が加入者に支払われる <企業が運用> |
掛金を確定 ↓ 加入者毎に資産を運用・管理 ↓ 運用実績に応じた額が支払われる <加入者が運用> |
しくみ |
将来の給付額をあらかじめ決めておき、 その給付額を賄うのに必要な掛金を、予定利率や平均余命などを用いた年金数理計算により算出して、拠出する制度です。 将来の給付額は、企業が保証しているため確定しています。 |
拠出額(掛金)をあらかじめ決めておき、将来の給付額は拠出額とその運用実績によって決まる制度です。 したがって、将来の給付額は運用実績によって変動します。 |
運用 |
年金資産の運用は企業が一括して行います。(契約先の生命保険会社や信託銀行に委託) 将来の給付額を企業が保証しているため、運用リスクは企業が負います。 運用がうまくいかなかった場合は、企業が補填します。(積立不足・後発債務) |
年金資産の運用は、運営管理機関が提示した金融商品の中から、加入者自身が選択して行います。したがって、運用リスクは加入者が負います。(自己責任原則) 運用がうまくいけば多額の給付を受けられる反面、うまくいかなかった場合は、給付額は少なくなります。 |
年金資産 の把握 |
個人別の残高は把握できません。 |
個人別に年金口座を持ち、年金資産を管理するので、残高の把握が明確です。 |
離転職時 の取扱 |
確定給付企業年金から転職先の確定拠出年金に資産(脱退一時金相当額)を移換することができます。 |
離転職時に年金資産の持ち運び(ポータビリティー)ができます。 |
キャッシュバランスプランについて
キャッシュバランスプランとは?
確定給付企業年金・厚生年金基金のひとつの形として、確定拠出年金の特性も一部併せ持つハイブリッド制度である「キャッシュバランスプラン」があります。
こちらの商品では、加入から支給終了までの全ての期間にわたって、指標利率(国債利回り等に連動)によって給付額が変わる設計が可能です。
キャッシュバランスプランの特徴について
仮想個人勘定の残高は、毎年加入者ごとに与えられる拠出付与額に利息を加算しそれを累積していくことになります。
拠出付与額 |
例:定額、給与×一定率、ポイント×単価 |
利息 |
実際の運用収益とは関係しない仮想的な利率(指標利率)によって計算する。 例:20年の長期国債利回り |
キャッシュバランスプランの年金給付について
従来型の企業年金と同じく、支給開始後は年金額を一定とする給付設計(年金額一定)と、支給開始後も指標利率の変動を年金額に反映させる給付設計(年金額変動)が可能です。
退職金と企業年金の違いについて
多くの人が退職金を年金払いで受けられる可能性がある
会社員の約3人に1人は企業年金を受けられる可能性があります。
確定給付企業年金は会社が独自におこなう企業年金制度
確定給付企業年金を採用すると、従業員の企業年金の準備を行うための毎月の掛金は会社の経費として認められますし、資産運用収入については非課税であるなど、企業が効果的に企業年金準備ができる税制となっています。
厚生年金基金は国の厚生年金と独自の企業年金の組み合わせによるもの
厚生年金基金という企業年金制度もあります。
これは国の厚生年金の一部と企業独自の企業年金を合体させて制度運営しているものです。
名前に「厚生年金」が含まれているので一見すると「国の年金制度」のようですが、実質的には企業年金です。
年金のパターンは色々あるので自分の年金について把握しておこう
受取条件や受取金額は各社それぞれです。
定年前に説明会などが行われることが一般的ですので、積極的に参加しておくと良いでしょう。
年金より一時金がいい場合は一時金としてもらう事もできる
ほとんどの企業年金制度には「一時金受取」のオプションが用意されています。
これは老後のマネープランに応じた柔軟性を認める仕組みです。
退職一時金は企業年金に変化できませんが、企業年金は退職一時金になりえます。
退職時の説明会等でよく確認しておきましょう。
確定給付企業年金から企業年金連合会への移換
中途脱退者の通算について
確定給付企業年金の中途脱退者は、脱退一時金相当額を連合会に移換し、年金化することができます。
終了制度加入者等の通算について
確定給付企業年金の終了制度加入者等は、残余財産分配金を連合会に移換し、年金化することができます。
企業型確定拠出年金の併用について
企業型確定拠出年金は個人型と併用できる?
企業型確定拠出年金は勤務先の企業が企業型確定拠出年金を採用している人が使える制度です。
個人型確定拠出年金は勤務先が制度に加入していない勤め人や、自営業者でした。しかし2017年1月1日からは誰もが確定拠出年金を利用できるようになりました。
企業型確定拠出年金を採用している企業に勤務している人も、個人型と企業型を併用できる場合があります。
詳しくは勤め先に確認してみましょう。
確定給付企業年金について知っておこう!
確定給付企業年金法(DB制度)は、その仕組みが少し煩わしい年金制度です。
しかし自分の将来に関わる大事なお金の話ですので、今回の情報を参考にし、年金制度について知識を深めるようにしていきましょう。
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