確定拠出年金と退職金は同じ物?違うもの?
日本の会社は、昔から退職金制度がありました。しかし最近では、退職金がなく確定拠出年金のみであったり、元々あった退職金制度から確定拠出年金制度に切り替えようとする会社が増えてきました。
確定拠出年金制度とはいったいどんなものなのでしょうか?退職金との違いを詳しく解説していきます。
確定拠出年金制度について
確定拠出年金ってどんな制度?
確定拠出年金は、企業や加入者が掛金を拠出し、加入者が運用します。将来の運用結果は自分の選択で決まります。「拠出する掛金が確定しているので確定拠出年金」と覚えると覚えやすいです。
確定拠出年金には個人型と企業型の2種類がある
確定拠出年金には、「企業型」と「個人型」があります。それぞれの特徴を比較してみましょう。
掛金の拠出
-
企業型:掛金の金額は企業が自社のルールに基づいて拠出する
-
個人型:掛金の金額は自分で決めて自分で拠出する
掛金の税制優遇
-
企業型:掛金は企業負担のため、企業の損金として企業が節税できる
-
個人型:掛金は自分の負担のため、自分の所得・住民税が節税できる
退職金と確定拠出年金の違いは?
そもそも退職金て何?
退職金とは、これまで勤めていた会社を退職するときに一括でお金が支払われる制度です。退職金制度は、会社の福利厚生の一環として実施されています。
退職金と確定拠出年金の違いって何?
退職金と確定拠出年金の違いを下記の表にまとめました。大きく違うところは、退職金の運用は会社にお任せですが、確定拠出年金の運用は個人で行います。
退職金と確定拠出年金の違い比較
退職金 |
確定拠出年金 |
|
お金の拠出 |
会社 |
企業型:会社 個人型:個人 |
制度の導入 |
会社 |
企業型:会社 個人型:個人 |
運用 |
会社 |
個人 |
受け取り方法 |
一時金 |
年金払い、または一時金 |
退職金規定は任意なので貰えない場合もある
退職金は会社の福利厚生の一環ですので、法的な義務はありません。その会社の制度に退職金がなければもらえません。
退職金はいくらもらえるのか分かりづらい
退職金は基本的に「基本給×勤務年数×給付率」で計算されます。この計算式を見ると計算が簡単そうですが、将来の基本給や給付率を予想することは難しいです。よって、退職金は将来いくら貰えるのかが分かりづらいです。
確定拠出年金は、インターネットで常に自分の資産が現在いくらなのか、将来どのくらいの利率で資産運用ができればいくらになるのかが分かります。
退職金と確定拠出年金って両方貰えるもの?
会社の制度で、退職金と確定拠出年金が両方あれば貰えます。ただし、最近は退職金から確定拠出年金に移行する会社が増えてきています。このような場合は、そもそも退職金制度が会社にありませんので、確定拠出年金しか貰えなくなります。
退職金の相場の平均について
退職金の平均額は「平成25年就労条件総合調査結果の概況」に記載されています。退職金の相場の平均額を見て見ましょう。
退職金の平均額
最終学歴 |
退職金平均額 |
大学卒(管理/事務/技術職) |
1,567万円 |
高校卒(管理/事務/技術職) |
1,470万円 |
退職金や確定拠出年金の税金について
退職金は「一時金」としてのみ受け取れます。確定拠出年金は「一時金」、「年金」、「一時金と年金」のどれかを選択して受け取れます。
一時金
退職金や確定拠出年金を一時金で受け取るときは、「退職所得控除」が適用されます。
退職所得計算式
退職所得 = ( 退職金(確定拠出年金含む)の収入金額 - 退職所得控除 ) × ½
退職所得控除額
勤続年数 |
退職所得控除額 |
20年以下 |
40万円 × 勤続年数 |
21年以上 |
800万円 + 70万円 × ( 勤続年数 - 20年 ) |
年金
年金(雑所得)には、「公的年金等控除」が適用されます。公的年金等控除は、年齢が65歳未満か65歳以上で異なります。65歳以上の方が、公的年金等控除額が増えるので、確定拠出年金は65歳以降で受け取った方が税制的には有利です。
年金所得計算式
年金所得 = 年金の総収入金額 - 公的年金等控除
65歳未満の公的年金等控除による雑所得金額
公的年金総収入 |
公的年金の雑所得金額 |
70万円以下 |
0円 |
70万円超130万円未満 |
公的年金総収入 - 70万円 |
130万円以上410万円未満 |
公的年金総収入 × 75% - 37.5万円 |
410万円以上770万円未満 |
公的年金総収入 × 85% - 78.5万円 |
770万円以上 |
公的年金総収入 × 95% - 155.5万円 |
65歳以上の公的年金等控除額による雑所得金額
公的年金総収入 |
公的年金の雑所得金額 |
120万円以下 |
0円 |
120万円超330万円未満 |
公的年金総収入 - 120万円 |
330万円以上410万円未満 |
公的年金総収入 × 75% - 37.5万円 |
410万円以上770万円未満 |
公的年金総収入 × 85% - 78.5万円 |
770万円以上 |
公的年金総収入 × 95% - 155.5万円 |
確定拠出年金の受け取り方法について
受け取り方法は3種類ある?
確定拠出年金の受け取り方法は、下記の3つがあります。
-
一時金で受け取る
-
保険商品で年金を受け取る
-
自分で運用しながら取り崩して運用していく
一時金で受け取る場合は
一時金は、退職した時に全額を一括で受取ります。
メリット
年金受け取りと比較して、一般的に税金が少なくなる場合が多い
デメリット
お金を受取ってしまうと運用資金がなくなるため、それ以上お金が増えない
一時金が向いている人
住宅ローンの繰り上げ返済など、大きな金額を必要としている人
保険商品により年金受け取る場合は
確定拠出年金で貯めたお金で「20年確定年金」などを契約し、年金を受取ります。
メリット
年金で受け取っている期間も保険会社が運用してくれるため、一時金より受取金額が多くなる
デメリット
一時金受け取りと比較して、一般的に税金が多くなる場合が多い
保険商品による年金受け取りが向いている人
毎月10万円など、安定した収入が欲しい人
運用しながら受け取り場合は?
年金を受取りながら、残りの資産を運用し続ける方法があります。
受取り方法には、定額を受取る「定額受け取り」と総資産額の○%ずつ受取る「定率受け取り」の2つがあります。
メリット
自分で運用して資産を増やせば、将来の年金額が増える
デメリット
運用がうまくいかないと、将来の年金額が減る可能性がある
保険商品による年金受け取りが向いている人
資産運用が得意で、自分で年金額を決めたい人
確定拠出年金制度の移行について
確定拠出年金制度移行の留意点は?
確定拠出年金は、退職一時金、確定給付企業年金、厚生年金基金などからの資産移管が認められています。
いくつか留意点がありますので、見ていきましょう。
移行の全般的注意点について
移行全般での注意点が2つあります。
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一度、確定拠出年金に移行した資金は、他の制度に移行できません
-
企業年金などを移行するときは、積み立てる責任者(企業など)の積立金不足があってはいけません
退職一時金からの移行について
会社が、退職一時金から確定拠出年金に制度を移行したい場合、単年度で全てを移行することはできません。
過去の退職金資産をに移行する場合、4~8年度のいずれかで分割して資産を移す決まりになっています。
確定給付企業年金や厚生年金基金からの移行について
確定給付企業年金や厚生年金基金からの移行する場合、会社の意志ではすべてを決められません。
現行制度の減額・終了の場合は労使合意を行い、確定拠出年金制度の設立に関する同意を得る必要があります。
転職時の確定拠出年金について
退職・転職時は確定拠出年金はどうなるの?
企業型確定拠出年金に加入している会社員が、退職・転職したときには確定拠出年金はどうなるのでしょうか?
下記の場合が考えられますが、それぞれによって手続きが異なります。
-
転職先に企業型確定拠出年金が導入されている場合
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転職先に年金制度がない、もしくは自営業になった場合
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転職先は企業型確定拠出年金に加入していないが、厚生年金基金や適格退職年金などの制度がある会社の場合、あるいは公務員や専業主婦になる場合
脱退一時金って何?
確定拠出年金は老後の資産ですので、原則60歳まで解約できません。ただし、一定の条件を満たした場合、「脱退一時金」を受け取ることができます。
脱退一時金とは、企業型確定拠出年金の加入者が資格を喪失した場合に、受け取ることができるお金のことです。
脱退一時金を受け取るための条件について
脱退一時金を受け取るための条件は複数あります。各条件は、下記の図でまとめられています。残高が15,000円以下の場合は、無条件で脱退一時金が受取れます。
解約するのに必要な手続きって何?
企業型確定拠出年金の解約を希望する場合は、さきほどの脱退一時金の条件を満たしていることを確認し、窓口の金融機関から「裁定請求書」を取り寄せて、提出すると解約できます。
退職・転職するときは確定拠出年金の確認が必要!
企業型確定拠出年金に加入している場合は、退職・転職するときに手続きが必要です。
退職して自営業などになる場合は、個人型確定拠出年金に移行します。この場合の手続きや金融機関探しは自分で行うことになります。転職の場合は、転職先の会社がどのような企業年金制度を採用しているかによって手続きが異なりますので、まずは転職先に確認してから、手続きを進める必要があります。
確定拠出年金と退職金前払いどちらがお得?
退職金前払いって何?
退職金前払いとは、退職金を給料や賞与に上乗せして前払いする制度です。
メリット
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従業員:退職前に退職金を受け取ることができる
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会社:将来の退職金の給付債務を圧縮できる
確定拠出年金と退職金前払いどちらがいいのか?
会社の制度にもよりますが、退職金を確定拠出年金か前払いの退職金のどちらかを選べる場合があります。下記のように、何を重視するかによってどちらがお得かが変わります。
-
税金面:確定拠出年金の方がお得です。前払い退職金は、所得税・住民税・社会保険料が差し引かれるので手取りが減ります。
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換金性:確定拠出年金は60歳まで資金を引き出すことができません。前払い退職金は、毎年お金を受け取ることができます。
確定拠出年金制度と退職金の違いについて知っておこう!
確定拠出年金制度と退職金の違いは理解していただけたでしょうか?
退職金はほぼ全てのことを会社が対応してくれますが、確定拠出年金は自分で運用するなどの自分で行う作業があります。
まずは、自分の会社がどのような年金制度を採用していているのかを確認しましょう。もし、確定拠出年金を採用している・これから採用しそうであれば、運用の勉強をして自分の年金資産を増やしましょう!
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