在職老齢年金制度をわかりやすく解説します!
「定年退職したら年金が貰える」
これはみなさんご存知のことでしょう。
しかし最近ではシルバー人材などを含む「高齢になっても仕事に就かれている方」がいらっしゃいますよね。
そんな方は「収入に応じて年金受給額が減らされることがある」ことをご存知ですか?
これを「在職老齢年金制度」と言います。
今回はこの在職老齢年金について、詳しくご紹介していきましょう。
「年金が貰える年になったけどまだ働いている」そんな方必見の内容となっていますので、ぜひ最後までお付き合いください。
65歳がポイント!在職老齢年金制度について
在職老齢年金の支給開始年齢は?
在職老齢年金の支給開始年齢は生年月日によって異なります。
下記の早見表で確認してみましょう。
在職老齢年金制度とは?
在職老齢年金とは、「年金を受けられる人が60歳以降も働いている」場合、年金の一部、または全額が支給停止されてしまう制度です。
しかしここで注意せねばならないのが「60歳台前半と60歳台後半では支給停止の方法が違う」という点です。
この点につきましては、次項で詳しくご説明しましょう。
厚生年金保険の適用事業所について
厚生年金保険は、事業所単位で適用されています。
強制適用事業所
厚生年金保険の強制適用事業所となるのは、株式会社などの法人の事業所です。
また従業員が常時5人以上いる個人の事業所についても、一部の事業所を除いて厚生年金保険の強制適用事業所となります。
任意適用事業所
上記の強制適用事業所以外の事業所であっても、従業員の半数以上が厚生年金保険の適用事業所となることに同意し、かつ事業主が申請して厚生労働大臣の認可を受けることができれば、適用事業所となることができます。
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労働者5人以上 |
労働者5人未満 |
法人事業所(人数に関係なし) |
強制 |
強制 |
以下を除く個人事業主 |
強制 |
任意 |
個人事業主(農業・漁業・※一部のサービス業) |
任意 |
任意 |
年金が減額・支給停止される金額は総報酬月額相当額と基本月額で決まる
気になるのが「年金のうちどれだけの額が支給停止されるか」です。
これは以下の3つの合計額で異なります。
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年齢(60歳以上65歳未満,65歳以上)
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年金(基本月額)
-
総報酬月額相当額 (標準報酬月額+年間標準賞与/12:給料とボーナスの1/12)
この3つの合計額です。
そして合計額が下記の金額を超えた場合には、注意が必要になってきます。
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60歳以上65歳未満:28万円
-
65歳以上:47万円
計算してみよう!在職老齢年金が支給停止にあるかを知りたい!
年のうちどれだけ支給額が停止されるのか?
「どれだけ支給額が停止されるのか」これを知る前に、以下の点を留意しておきましょう。
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60歳以上から65歳未満の場合
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65歳以上の場合
この2つで計算方法が異なることと、下記の2点です。
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対象は老齢厚生年金のみです
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支給停止対象は、厚生年金(老齢厚生年金)のみ
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国民年金(老齢基礎年金)は対象外
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加給年金との関係に注意しましょう
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厚生年金(老齢厚生年金)の全額支給停止では加給年金額も全額支給停止
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全額支給停止以外では加給年金額は全額支給
以上のことを念頭に置き、次からの具体的な金額をご覧ください。
60歳以上65歳未満の在職老齢年金支給停止額について
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年金月額と総報酬相月額当額の合計が28万円以下
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支給停止なし(全額支給)
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総報酬相月額当額が47万円以下
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基本月額が28万円以下:支給停止額=(総報酬月額相当額+基本月額-28万円)÷2
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基本月額が28万円を超える:支給停止額=総報酬月額相当額÷2
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総報酬相月額当額が47万円以上
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基本月額が28万円以下:支給停止額=(47万円+基本月額-28万円)÷2+(総報酬月額相当額-47万円)
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基本月額が28万円を超える:支給停止額=47万円÷2+(総報酬月額相当額-47万円)
これを見てわかるように、60歳~65歳未満では「28万円」と「47万円」という2つの区切りで計算されているということです。
65歳以上の在職老齢年金支給停止額について
65歳以上の場合では「47万円」の区切りだけで変わることになります。
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年金月額と総報酬相月額当額の合計が47万円以下
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支給停止なし(全額支給)
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総報酬相月額当額が47万円以上
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支給停止額=(総報酬月額相当額+基本月額-47万円)÷2
70歳以上の在職老齢年金は基本月額+総報酬月額相当額が46万円以下なら支給停止はされない
平成19年4月からの法改正で、70歳以降の年金支給停止の規定が導入されました。
そのため平成19年4月1日よりも前に70歳になっておられたという方、つまり、昭和12年4月1日以前生まれの方の場合は、この70歳以降の支給停止の仕組みは適用されません。
在職老齢年金計算エクセルシートで計算
年金の基本月額や標準報酬月額、直近1年間の標準賞与額の合計額を入れれば、在職老齢年金の支給調整額や受取年金額、月額給与との手取り額を簡単に計算できるエクセルシートがあります。
これは厚生年金基金に加入履歴がある人や、高年齢雇用継続基本給付との併給調整には対応していませんので、あくまでも概算計算として使いましょう。
平成29年在職老齢年金の早見表について
60歳以上65歳未満場合
平成29年在職老齢年金の早見表を記載しておきましょう。
まずは60歳以上65歳未満の場合です。
65歳以上の場合
65歳以上の方はこちらを参考にしてください。
在職老齢年金の支給停止額の変更は手続きは必要?
在職老齢年金の支給停止額の変更については事業主が行う届出により自動的に行われる
繰り返しになりますが、在職老齢年金の計算方法は下記の式です。
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総報酬月額相当額=その月の標準報酬月額+その月以前1年間の標準賞与額の総額÷12
つまりこの総報酬月額相当額が変われば、おのずと在職老齢年金の支給停止額も変更になります。
しかしご安心ください。
この変動の際には、被保険者の方、つまりあなた自身は特に手続きをする必要はありません。
これらは全て会社(事業主)が行ってくれるのです。
報酬月額や賞与額については、会社が行うべき届出が存在します。
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報酬月額については月額変更届
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賞与を支給したときは賞与支払届
これらを会社が届け出なければならないのです。
これらの会社が行った届出に基づいて、標準報酬月額やその月以前1年間の標準賞与額の総額が改定されたら、改定された月以後に支給される分の年金から支給停止額が自動的に変わり、年金支給額も自動的に変わることになります。
年金を貰いながら働く際は在職老齢年金制度に気を付けよう!
いかがですか?
在職老齢年金制度について、少しおわかり頂けたでしょうか。
「将来年金が貰えるようになっても働けば、年金と給料で楽に暮らせる!」なんてお思いの方もおられたかと思いますが、実はしっかりと年金受給額が減らされてしまう制度があったのです。
またその計算方法も、収入・年齢・貰える予定だった年金額によって変わるなど、煩わしい点も多い制度でしたね。
労働者からすれば何とも納得のいかない制度ではありますが、これは将来年金が貰える年齢になっても勤務し続けるのであれば、とても大事な話になります。
今回の情報を参考にし、しっかりと年金制度について学んでおきましょう。
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