まとまった収入になる「退職金」|所得税はどうなるの?
退職金で節税する方法はあるのでしょうか?
退職する際に支給される退職金ですが、この制度が節税に役立つものだとご存知でしたか?
今回は退職金と節税の関係性について、詳しくご紹介していきましょう。
サラリーマンの退職金を利用して税金を抑える方法とは?
退職所得控除について
退職所得控除は、勤続20年までは1年当たり40万円、それを超える分は1年当たり70万円となります。
退職金は三重の優遇がある
退職金は下記の3段階で優遇されています。
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退職所得控除
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二分の一軽課
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分離課税
給料の一部を退職金に回す事で手取りが増える?
企業にとっては、退職金でも給料でも支払いコストは変わりません。
しかし受け取る側にとっては、退職金に回してもらった方が税金は安く済みます。
官僚や金持ちが得する制度は簡単にはなくならない
大企業の役員、高級官僚、都道府県知事といった人が得をする税制というのは、そう簡単にはなくなりません。
何故ならこの外資と同じやり方をしているのが、都道府県知事であり、天下り先を転々とする官僚だからです。
退職金の控除額計算方法は勤続年数によって違ってくる
退職金は、退職所得という所得税の分類に振り分けられます。
この退職所得の課税額計算は、通常の給与所得とは計算方法が異なり、勤続年数で控除額の変動します。
控除後の全額が課税されるわけではない
課税される所得額といっても、控除後の全額が所得額とみなされないのが退職所得の特徴です。
控除額を差し引いた退職金額を、更に2分の1したものに課税されます。
給与所得を受けた分の課税額は変わらない
退職所得は他の所得とは全く別ものとして課税されます。
そのため退職金がいくらであろうが、給与所得を受けていた分への課税額というのは変わりません。
定年まで働くのが一番大きな節税対策になる
この退職所得の特性や控除を知らないと、依願退職で少し早めに退職してしまおうと考えたときに税額控除の面で損をしてしまいます。
目の前の多少の税金節約よりも、定年まできっちりと勤め上げたほうが大きく節税できることを覚えておきましょう。
転職をする場合も勤続年数を考えてからするようにする
自分がいざ転職したいと考えた時に、勤続年数を満たしていて退職金をもらえるのであれば、勤続年数が1年でも多くなるようにしてから退職する方が節税になります。
企業年金受け取り方について
企業年金を年金払いで受け取った場合には、その所得を雑所得として、公的年金と合算して税金の計算をします。
公的年金や企業年金については控除枠があり、これを超えた分が課税対象となります。
税制的に見れば一時金受け取りは有利に思うが?
いつかは退職一時金の税制について課税強化が実施されると思われます。
しかし政治的な問題もあり、そのタイミングは分かりません。
退職直前には、必ず最新の税制を確認するようにしましょう。
選択肢がある場合はバランスを考えて選択しよう
企業年金については、年金受け取りと一時金受け取りのどちらかを自分で選べる仕組みがあります。
この場合はどちらが得をする選択肢か、ライフプラン等も考慮しながら検討しましょう。
退職金の確定申告で得するのはこんな人
退職金の確定申告は基本的にする必要がないが申請すると還付される?
「退職金の確定申告は基本的にする必要がない」その理由は、「所得税と復興特別所得税はもう頂いているので確定申告しなくてもいいですよ」ということです。
しかし確定申告することで、退職金から源泉徴収された税金が還付されるケースもあります。
退職金は退職所得控除のおかげで税金がかなり軽減されている
分離課税の退職金にかかる税金は次の通りです。
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所得税=(退職金-退職所得控除)×0.5×所得税率
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復興特別所得税=所得税額×2.1%(平成25年1月1日~平成49年12月31日まで)
なお、退職所得控除は下記の通りです。
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勤続20年以下の場合=40万円×勤続年数(80万円未満の場合は80万円とする)
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勤続20年超えの場合=800万円+70万円×(勤続年数-20年)
退職金にかかる所得税額の計算方法について
60歳で退職(勤続38年)する人が退職金2,300万円を受け取るとします。
そのときの税金は、退職所得控除で2,060万円軽減され、6万1,260円で済みます。
ただし別途、住民税が12万円徴収されます。
退職金から源泉徴収された税金はいくら戻るのか?
退職金に対する課税はかなり優遇されているので、税金は戻ったとしても数万円~数十万円程度でしょう。
退職金を確定申告すると得する人とはどんな人?
年間の所得額が少なく、それに対して所得控除や税額控除などが多い場合は、退職金を含めて確定申告すると、退職金から源泉徴収された税金が還付される可能性が高くなります。
法人の役員退職金を使った所得税の節税について
退職金控除について
支給する退職金のうち、控除できる額には以下のように決められています。
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勤続年数20年以下:40万円×勤続年数
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勤続年数20年以上:800万円+{70万円×(勤続年数ー20年)}
超えた分は半分だけ課税されてしまう?
退職金の金額から控除額を差し引いて、残った控除後の所得に半分だけ課税されます。
分離課税によって他の所得とは別に計算する
退職金は他の所得とは別に分離して課税されるという仕組みになっています。
分離課税ということは、それだけ所得税率が低く抑えられるということです。
役員退職金の損金算入について
会社経営をしていれば、退職金を多く支払うことで自分にとっては所得税の節税になり、会社は退職金を損金参入することで法人税の節税を行なうことができます。
法人税の節税効果は「支払った退職金額×法実効税率」です。
退職金の確定申告をする際の必要書類と書き方
退職所得の確定申告書はどんな手順で作るのか
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・2015年に退職
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・雇用保険の失業給付を受給中の58歳男性(妻55歳・専業主婦)
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・他の収入はない
このケースで確定申告書を作成してみましょう。
退職所得の確定申告に必要な書類を揃えよう
必要な書類は下記の3つです。
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給与や退職金の源泉徴収票
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生命保険料や地震保険料などの控除証明書
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社会保険料の納付書
申告書はB様式と分離課税用を用意しよう
確定申告書にはAとBの2種類があります。
退職金の確定申告には、多くの場合申告書B様式と申告書第三表を使います。
申告書は下記からダウンロードできます。
申告書B第二表に記入の仕方
手元に、給与所得と退職所得の源泉徴収票を準備しましょう。
【1】 申告書B第二表【所得の内訳(所得税及び復興特別所得税の源泉徴収税額)】に、所得の種類(退職あるいは給与)別に会社名、収入金額、所得税及び復興特別所得税の源泉徴収税額(=以下「源泉徴収税額」とする)を源泉徴収票から転記。源泉徴収税額の合計額を計算して(44)に記入する。
⇒この数字を申告書B第一表【税金の計算(源泉徴収税額)】(44)に転記する。
【2】申告書B第二表【所得から差し引かれる金額に関する事項】「(12)社会保険料控除」に、給与より支払った社会保険料と退職後に払った健康保険料や介護保険料、国民年金保険料を記入する。
⇒申告書B第一表【所得から差し引かれる金額】「社会保険料控除(12)」に転記する。
【3】申告書B第二表【所得から差し引かれる金額に関する事項】「(14)生命保険料控除」、「(15)地震保険料控除」に保険料を記入する。
⇒これをもとに、生命保険料控除や地震保険料控除を算出し、申告書B第一表【所得から差し引かれる金額】「生命保険料控除」(14)「地震保険料控除」(15)に記入する。
【4】申告書B第二表【所得から差し引かれる金額に関する事項】「(21)~(23)配偶者(特別)控除・扶養控除」に必要事項を記入し、控除額を計算する。
⇒申告書B第一表【所得から差し引かれる金額】「配偶者(特別)控除」(21)~(22)「扶養控除」(23)に転記する。
申告書B第一表に記入の仕方
申告書B第二表は、参考用に横に置き、申告書B第一表を開きましょう。
【1】給与所得の源泉徴収票の支払金額を【収入金額等】の「給与」(カ)に記入する。
【2】給与所得控除額を計算し、「支払金額-給与所得控除額」を【所得金額】「給与」(6)、「合計」(9)に記入する。
【3】【所得から差し引かれる金額】「社会保険料控除」(12)や「生命保険料控除」(14)、「地震保険料控除」(15)、「配偶者(特別)控除」(21)~(22)、「扶養控除」(23)、「基礎控除」(24)など該当する欄と「合計」(25)に記入する(申告書B第二表から転記)。
申告書第三表(分離課税用)に記入の仕方
退職所得の源泉徴収票を準備し、申告書第三表に取りかかりましょう。
【1】【収入金額】「退職」(二)に支払金額を、右下の【退職所得に関する事項】に会社名と退職所得控除額を記入する。
【2】 【所得金額】「退職」(69)に退職所得を計算(※1)して記入する。
【3】 【税金の計算】「総合課税の合計額」(9)に、申告書B第一表(9)を転記する。
【4】【税金の計算】「所得から差し引かれる金額」(25)に、申告書B第一表(25)を転記する。
【5】【税金の計算】課税される所得金額「(9)対応分」=(70)に、「(9)-(25)」を転記する。
【6】【税金の計算 】課税される所得金額「(69)対応分」=(77)に、(69)を転記する。
【7】【税金の計算 税額】「(70)対応分」=(78)と「(77)対応分」=(85)に所得税額をそれぞれ計算して記入する。
【8】(78)と(85)の合計額を(86)に記入する。
⇒申告書B第一表(27)に転記する。
(※1)
・退職所得=(支払金額-退職所得控除額) × 0.5
・退職所得控除額(勤続年数が20年未満)=40万円×勤続年数(80万円より少ない時は80万円)
・退職所得控除額(勤続年数が20年を超える場合)=800万円+70万円×(勤続年数-20年)
申告書B第一表・第二表に戻る
還付申告の最終段階です。
申告書B第一表・第二表を使います。
【1】申告書B第一表【税金の計算】(27)を【差引所得税額】(38)に転記する。(28)~(37)の控除がある場合は、それらを(27)から差し引き(38)に記入する。
【2】 【税金の計算】「再差引所得税額(基準所得税額)」(40)に、「(38) ― (39)」の金額を記入する。
【3】【税金の計算】「復興特別所得税」(41)を計算する。
【4】【税金の計算】「所得税及び復興特別所得税の額」(42)に「(40)+(41)」の金額を記入する。
【5】【税金の計算】「所得税及び復興特別所得税の源泉徴収税額」(44)に申告書B第二表(44)を転記する。
【6】【税金の計算】「所得税及び復興特別所得税の申告納税額」(45)に「(42)-(44)」の金額を記入する。マイナスの場合、その金額が還付される。
申告書に記入する税額の計算式について
確定申告書を作成する上で必要な計算方法については、下記に記載されていますので参考にしてみましょう。
平成27年分 所得税及び復興特別所得税の確定申告の手引き 確定申告書B用
退職金とふるさと納税の関係は?
退職金はふるさと納税の控除対象になるのか?
退職金の所得税はふるさと納税の控除対象となりますが、住民税は控除対象外です。
住民税は分離課税になる
「退職金での住民税がふるさと納税の適用対象外」なのは、住民税は収入があった翌年に収入分の税金が課せられますが、退職金についてそれをしてしまうと、納税者の負担が大きくなってしまいます。
そのため、収入のあったその年のうちに徴収してしまうためです。
退職金がある場合のふるさと納税限度額の計算方法について
基本的に限度額は特別徴収額の25%~45%程度になります。
「退職金の25%程度」と見積もっておけば、限度額を超える可能性は低いでしょう。
中小企業退職金共済などの保険制度を活用する方法
中小企業退職金共済とは?
「中小企業退職金共済」とは、国が運営する退職金制度です。
この制度に加入すればお得に退職金を準備でき、かつ退職時には従業員に中退共から退職金が直接支払われます。
加入資格について
主な対象は以下の通りです。
業種 |
常用従業員数 |
資本金・出資金 |
一般業種(製造業、建設業等) |
300人以下 |
3億円以下 |
卸売業 |
100人以下 |
1億円以下 |
サービス業 |
100人以下 |
5千万円以下 |
小売業 |
50人以下 |
5千万円以下 |
掛け金は?
掛金月額は以下の16種類の金額があります。
5,000円 |
6,000円 |
7,000円 |
8,000円 |
9,000円 |
10,000円 |
12,000円 |
14,000円 |
16,000円 |
18,000円 |
20,000円 |
22,000円 |
24,000円 |
26,000円 |
28,000円 |
30,000円 |
掛け金支払い時の節税ポイントについて
掛け金については、個人事業者・法人ともに全額を所得控除として申告することができます。
国や地方公共団体からの助成制度がある
税金上のメリット以外にも、現在では国から一定期間は助成金を受け取りながら掛け金を支払うことができます。
退職金で上手に節税しよう!
退職金制度を使うことで、大幅な節税をすることが可能です。
メリットデメリットをしっかりと理解し、上手に活用しましょう。
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