2017/08/21

お金の雑学

910views

贈与とは何かを理解する

相続の前に贈与をよく理解してから有利な贈与をする

あなたは贈与について理解していますか? 普段あまりなじみが無いかもしれませんが、贈与は相続と深い関係にあります。相続が気になり始めたら、贈与についても学んでみましょう。

この記事では、贈与のしくみや気を付けるべきポイント、贈与税の概要についてご紹介します。

贈与の種類は

相続の前に贈与をよく理解してから有利な贈与をする

一口に「贈与」といっても、いくつか種類があります。まずは贈与の定義と種類について確認してみましょう。

相続と贈与の違い

相続は、被相続人が亡くなることで、その人の財産が相続人のものになることです。被相続人が「これは○○にあげます」という意思表示が無くても、相続は成立します。

一方贈与は、贈与者が受贈者に無償で財産を与えることです。贈与者(あげる人)が「あげます」と意思表示をし、受贈者(もらう人)が「もらいます」と意思表示をすることで成立します。

財産がほかの人に移るという点では相続と贈与は似ているのですが、相続は意思表示が不要、贈与は双方の意思表示が必要という点が異なっています

生前贈与

生前贈与とは、生きているうちの贈与のことです。対になる言葉は「死因贈与」「遺贈」です。これらは、贈与者(あげる人)の死亡したタイミングで財産をあげることです。「死因贈与」とは生前に「私が死んだらこれをあなたにあげる」と決めておく場合の贈与のことです。「遺贈」は遺言で贈与の意思表示をするケースを指します。

定期贈与

定期的に贈与を行うこと定期贈与と呼びます。例えば「毎年100万円ずつ、10年間贈与する」といったケースです。このとき、始めに「毎年100万円ずつ、10年間贈与する」と取り決めると、〈100万円×10年=1,000万円を受け取る権利〉を与えられたものとみなされます

あらかじめ取り決めをしてもしなくても、贈与する総額は同じです。しかし、取り決めをする場合としない場合とでは、税金の金額が大きく変わってきます(詳しくは後述)。

負担付贈与

負担付贈与とは、受贈者(もらう人)が何らかの義務を負うことを条件とした贈与です。例えば、「土地を贈与する条件として借金を肩代わりしてほしい」といったケースです。受贈者(もらう人)が負担を負わない場合、贈与者(あげる人)は贈与とやめることができます

負担付贈与の場合、贈与税の対象となるのは贈与された財産の価額から負担額を控除した金額です。先ほどの土地と借金のケースで言えば、土地の値段から借金の残額を引いた金額が、贈与税の対象となります。

贈与のとき払うのが贈与税

相続があったときには相続税を納めますよね? 同様に、贈与を受けたときには贈与税という税金を納めます。一般に、同じ財産にかかる税は相続税より贈与税が高額になります

贈与するとき知っておきたいこと

相続の前に贈与をよく理解してから有利な贈与をする

贈与は相続対策によく使われます。しかし、何も考えずに贈与を行なうとかえって納税額を増やしてしまうこともあります。ここでは、贈与をするときに最低限抑えておくべきポイントをご紹介します。

相続対策としての贈与

贈与は相続対策に有効です。相続の前に財産を贈与してしまうことで、相続財産が減り、相続税を少なくすることができるからです。

相続対策のために贈与をする場合、何年かにわたって小分けに贈与をおこなうことが多いです。贈与税には110万円の基礎控除があり、年間110万円以内の贈与には贈与税がかからないのです。これを利用して、年間110万円以内の贈与を繰り返すことで、税金をかけずに相続財産を減らすことができるのです。

贈与するときの留意点

贈与や相続に対しては、税務署の調査が入る場合があります。相続対策のために小分けの贈与を行う場合、その贈与が贈与の分割とみなされないように注意しなくてはなりません。例えば「毎年100万円ずつ、10年間贈与する」という場合、あらかじめ「毎年100万円ずつ、10年間贈与する」と取り決めていたのではないかと疑われる可能性があります。

あらかじめ「毎年100万円ずつ、10年間贈与する」と取り決めていたとすると、これは〈10万円の贈与が10回発生した〉のではなく、〈100万円×10年=1,000万円を受け取る権利の贈与〉があったと判断されます。すると、この取り決めをした年に1,000万円の贈与が発生したことになり、110万円の基礎控除をオーバーするので、贈与税がかかってしまうのです。

こうした状況を避けるためには、〈100万円×10年=1,000万円を受け取る権利の贈与〉があったのではなく、1回1回の贈与が別物だということを証明しなくてはなりません。証明するための手段として、毎回の贈与ごとに贈与契約書を作成しておくのがおすすめです。

贈与契約書の作り方

贈与契約書に決まった書式はありません。必ず記載すべきことは、以下の点です。

(1)誰が贈与するのか

(2)誰に贈与するのか

(3)何を贈与するのか

(4)いつ贈与するのか

(5)どうやって贈与するのか

(6)どのような条件で贈与するのか(条件がある場合)

契約書の下部には、締結した日にちと贈与者・受贈者それぞれの住所と氏名(それぞれが自署)を記載し、捺印します。

相続時精算課税

贈与と相続の関係を語る上で外せないのが、相続時精算課税という制度です。この制度は、生前の贈与に対する贈与税を支払わなくていい代わりに、相続が発生したときに贈与財産と相続財産とをまとめて相続税の対象とする制度です。

例えば生前に1,000万円の贈与を受け、相続で2,000万円を取得した場合を考えてみましょう。通常は1,000万円から110万円を差し引いた890万円が贈与税の対象となります。また、2,000万円に対して相続税がかかります。

このとき相続時精算課税を選択していると、贈与税はかかりません。1,000万円と2,000万円を足した3,000万円が相続税の対象となります。

相続時精算課税の選択は贈与者ごとに行うことができ、相続時精算課税を選択すると2,500万円の非課税枠が設定されます。例えば父からの贈与に相続時精算課税を選択したとしましょう。父からの贈与は2,500万円まで贈与税がかかりません。この2,500万円という枠は年が変わってもリセットされません。また、父からの贈与はすべて相続時精算課税が適用され、110万円の基礎控除は受けることができなくなります。

このとき、母から財産を贈与された場合は相続時精算課税の対象とならず、こちらも別途相続時精算課税の手続きをしない限り、通常の贈与となり110万円の基礎控除の対象となります。

なお、相続時精算課税には以下のような条件があります。

【贈与者(あげる人)の要件】

・贈与をした年の1月1日時点で60歳以上であること

・受贈者の父母又は祖父母であること

【受贈者(もらう人)の要件】

・贈与を受けた年の1月1日において20歳以上であること

・贈与者の直系卑属(子や孫)であること

・贈与者の推定相続人であること

相続時精算課税は贈与税がかからないので一見お得ですが、相続時には相続税がかかる点に注意が必要です。現金のように小分けに贈与できる財産であれば、110万円以内の贈与を繰り返すほうが節税になる可能性があるでしょう。

一方、不動産のように小分けに贈与するのが難しい財産を贈与したい場合は、相続時精算課税が役立ちます。

贈与はもらう人の意思表示で成立

相続の前に贈与をよく理解してから有利な贈与をする

贈与が成立する要件は、贈与者(あげる人)と受贈者(もらう人)双方の意思表示により成り立つということです。単純そうですが、実は贈与のつもりなのに贈与になっていないケースや、贈与のつもりがないのに贈与に当てはまってしまうケースが多々あります

現金贈与と現物贈与

贈与というとお金を思い浮かべやすいですが、モノをあげた場合も贈与となります。贈与税が課税されるのは年間110万円を超えた部分です。これに該当する可能性があるものとしては、不動産や自動車、宝飾品、株や債券などが挙げられるでしょう。

ここで注意が必要なのは、モノの贈与の場合であっても、贈与税は現金で一括払いする必要があるということです。「贈与を受けたものの、贈与税が支払えず、結局贈与された財産を売ることに……」なんてことになっては本末転倒です。高額なモノを贈与するときには、もらう側とタイミングなどをよく話し合うといいでしょう。

親子間の貸借、土地の無償使用、低額譲受け

【親子間の貸借】

住宅資金などで子が親からお金を借りるケースがあると思いますが、これが贈与とみなされ贈与税が課される場合があります。贈与とみなされやすいのは、以下のような場合です。

(1)借用書や金銭貸借契約書を作成していない

→借金であることを示す証拠がありません。

(2)返済期日が定められていない

→「返すのはいつでもいい」という借金は、あげたのと同じですよね。

(3)返済が滞っている

→返していない=実はあげたのでは? という疑惑を招いてしまいます。

(4)現金渡しで返済している(口座振替等にしていない)

→返済しているという証拠がありません。

(5)利息がない

→全額が贈与扱いにはなりませんが、利息相当額を贈与したものとみなされます。

【土地の無償使用】

一般的に土地を借りるのにはお金がかかります。でも、親の土地に子が家を建てるといった話はよく聞きます。このように土地を無償で使っている場合は、贈与税の対象となるのでしょうか。

この疑問への答えはノーです。土地を自分が使うために借りている場合、土地を使う権利はゼロ円として取り扱うことになっているのです。

【低額譲受け】

著しく低い価額で財産を譲渡することを、低額譲受けと言います。低額譲受けの場合、譲り受けた財産の本来の価額と、支払った対価との差額が贈与になります。例えば時価5,000万円の土地を2,000万円で譲渡した場合、差額の3,000万円は贈与とみなされます。

孫への贈与

孫への贈与の際は、孫がその贈与を受ける意思表示をしているかがポイントとなります。例えば、孫には内緒で孫名義の銀行口座を作って毎年100万円ずつ振り込んだという場合、孫は贈与を受ける意思表示をしていません。ですから、この孫名義の預金は「名義は孫だが、実質は贈与されていない」と判断されるのです。この預金の存在を孫に知らせて、管理を孫に任せた時、一括で贈与されたものとみなされます。

幼い孫に大金を渡すと、使い込んでしまうのではないか、金銭感覚が狂うのではと心配かもしれませんが、贈与されていないことになっては困りますよね。孫が未成年の場合、通帳の管理は親権者(親)でも構いません。贈与を成立させるためには、面倒でも、贈与のたびに贈与契約書を取り交わしてお金を振り込むのがベストです。

結婚資金、子育て資金、教育資金

人生の中では、多額のお金が必要になる局面がいくつかあります。その代表格が結婚・子育て・教育資金です。これらの資金については、贈与しやすくなるような制度が設けられています。

結婚・子育て資金の一括贈与

直系尊属(親や祖父母)から受けた結婚・子育て資金の贈与は、1,000万円まで(このうち結婚費用は300万円まで)非課税になります。ただし受贈者が20歳以上50歳未満であることが条件で、50歳に達した時点で使用していない金額に対しては通常の贈与税が課されます

教育資金贈与

直系尊属(親や祖父母)から受けた教育資金の贈与は、1,500万円まで非課税になります。ただし受贈者が30歳未満であることが条件で、30歳に達した時点で使用していない金額に対しては通常の贈与税が課されます

生前贈与の必要書類と費用

生前贈与を行なう時は、確かに贈与があったという証拠を残すために贈与契約書を作成するとよいでしょう。贈与契約書には決まった形式などは無いので、自作することも可能です。自作した場合は費用はかかりません。

より信頼性を増したい場合は、公証役場で確定日付を入れてもらうのがおすすめです。公証役場では契約書の内容にはノータッチで、契約内容が確定した日の日付印を入れてもらうものです。手数料は700円と安価なので、毎年贈与を行なう場合でも利用しやすいでしょう。

高額な贈与や不動産などの専門知識を要する贈与で、万全を期したい場合には行政書士や司法書士といったプロに依頼してはいかがでしょうか。費用は契約書の内容や事務所によって異なりますが、数万円で依頼できるところが多いようです。

贈与税はこの位掛かる

相続の前に贈与をよく理解してから有利な贈与をする

贈与税の申告と計算のしかたについて簡単にご紹介します。

贈与税 申告

年間110万円超の贈与を受けたら、贈与税の申告と納付を行わなくてはなりません。相続時精算課税を選択している場合は、金額にかかわらず、贈与があったら必ず申告の必要があります。

贈与税の申告受付期間は、贈与があった翌年の2月1日から3月15日です。贈与者(あげる人)と受贈者(もらう人)の続柄によって贈与税額が変わる場合があるので、受贈者の戸籍謄本や戸籍の附表を添付する必要があります。

贈与税 税率

贈与税は、基礎控除後の金額×税率-控除額で計算します。税率は以下のように定められています。

【一般税率】

通常の贈与の場合に用いる税率です。

基礎控除後の金額

200万円以下

300万円以下

400万円以下

600万円以下

1,000万円以下

1,500万円以下

3,000万円以下

3,000万円超

税率

10%

15%

20%

30%

40%

45%

50%

55%

控除額

10万円

25万円

65万円

125万円

175万円

250万円

400万円

 

【特例税率】

受贈者が20歳以上で、贈与者の直系卑属(子や孫)の場合に用いる税率です。

 

基礎控除後の金額

200万円以下

400万円以下

600万円以下

1,000万円以下

1,500万円以下

3,000万円以下

4,500万円以下

4,500万円超

税率

10%

15%

20%

30%

40%

45%

50%

55%

控除額

10万円

30万円

90万円

190万円

265万円

415万円

640万円

贈与税は誰が払うか

贈与税は、受贈者(もらった人)が払います。当然ですが所得税のように天引きされることはなく、自分で申告しなくてはならないので忘れないようにしなければなりません。申告書の書き方は税務署の窓口で教えてもらえるので、書き方が分からなくても心配は要りません。

みなし贈与で贈与税

贈与とは本来贈与者(あげる人)と受贈者(もらう人)の意思表示があってはじめて成り立ちますが、贈与のつもりがなくても贈与に該当しているケースがあります。これをみなし贈与と言います。以下は、みなし贈与に該当しやすいケースの例です。

・低額譲受け

・借金の帳消し

・無利息の借金

・不動産等の名義変更

・自分以外の人が保険料を支払っていた死亡保険金の受取

贈与の認識なしにやりがちなこれらの行為ですが、みなし贈与と認められれば贈与税がかかります。もし贈与に当たるかどうか迷ったら、税務署に相談してみましょう。本格的な節税をしたい場合は、税理士に相談するのがおすすめです。

贈与するときにかかる費用や税金について

相続の前に贈与をよく理解してから有利な贈与をする

贈与とは、贈与者が受贈者に無償で財産を与えることです。贈与のやりかたや条件により、いくつかの種類に分かれています。贈与はよく相続対策として使われますが、ポイントを押さえて贈与を行なわないと、かえって損をしてしまいます。まずは贈与の基礎控除額年間110万円をうまく活用することが大切です。

一見贈与なのかどうか分かりにくい取引や行為があります。「相続対策のために贈与していたつもりなのに、贈与になっていなかった」「贈与のつもりがなかったのに、贈与税が必要だと分かった」などということになっては困りますね。自分がやろうとしていることが贈与にあたるかどうか分からない場合は、税務署に確認してみることをおすすめします。

贈与をするときには特別な手続きや費用はかかりませんが、後々のトラブルを避けるために、贈与契約書を作成しておくのがおすすめです。素人でも比較的簡単に作れて、自作ならば費用はかかりません。

贈与にはいろいろな特例などもあって複雑ですが、よく理解して有利な贈与をすることで、配偶者や下の世代の相続時の負担軽減につながります。ポイントを押さえて、上手な贈与をしてみましょう。

関連する記事

相続税なんて関係ないと思っていたアナタにも税金がのしかかる?!2015年に改正された相続税・贈与税のことを知っておこう。

【不動産・相続・借金・税金など】些細な相談もお任せあれ!役所で行っている相談【まとめ】

知りたいけどなかなか聞けない遺言の事。遺言書を作るメリットをお教えします。

この記事が気に入ったらいいね!しよう

マネストの最新エントリーが見られます。

Twitterでマネストをフォローしよう!

「」ランキング

人気記事総合ランキング

Tweet by @ManeSto_com